アニメ質問状:「メイドインアビス」 ドキュメンタリー番組を見るような体験を

テレビアニメ「メイドインアビス」の一場面(C)2017 つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス製作委員会
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テレビアニメ「メイドインアビス」の一場面(C)2017 つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス製作委員会

  話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、つくしあきひとさんのマンガが原作のテレビアニメ「メイドインアビス」です。副監督の垪和等(はが・ひとし)さんに作品の魅力を語ってもらいました。

ウナギノボリ

――作品の概要と魅力は?

 南海ベオルスカの孤島に発見された巨大な縦穴・アビス。直径1000メートル、深さはいまだ不明。地上とは異なる不可思議な環境は、魅力あふれる謎の遺物が発掘されると同時に、人間には過酷な”呪い”がもたらされる。そんなアビスの“探窟家”に憧れる少女・リコが、ひょんなことで出会った(拾った?)少年ロボット・レグと共に、伝説の探窟家である母を求めアビスの深層へと向かい冒険し、様々な困難に立ち向かうお話です。

――アニメにするときに心がけたことは?

 原作の緻密に描き込まれたイメージをどこまで映像化できるか、ありそうでなさそうな世界観を原作ファンのみならず、初めてアビスをご覧になる方々にもいかに説得力を持って伝えられるかに注力しました。アマゾンの秘境や深海の生物を紹介するドキュメンタリー番組を見るような体験をお届けできたらと思います。

 第1話冒頭などでは、滝から立ち上った水の匂いや湿度が感じられたり、身の回りにいそうな虫を思わず手で払いたくなるような映像になればと。また、可愛いだけのキャラクターではなく、素直で実直な姿や行動力も原作の魅力を余すところなく表現したいと思いました。うれしくてピョンピョン跳ね、足をぶつけて痛かったりといった子供らしさや、友達を心配し、涙するような心の動きもダイレクトに表現されたらよいと思いました。

 この作品をアニメ化するにあたり、新たにスタッフルームを作りました。監督をはじめ演出、作画、彩色など通常のアニメ制作会社のスタッフに加え、普段は別々の場所で作業している美術スタッフさんも同じフロアで作業していただいています。また、撮影さんも味噌汁の冷めないような近場となりまして、これらによって綿密なやり取りが可能になったことが、映像に表れたらと。結果は、これまでの放送で皆さんがお目にしている通りだと思います。

――作品を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったことは?

 (原作者の)つくし先生にお会いできたのはうれしかったですね。そこではたくさん質問させていただきました。例えば、電力、燃料、印刷、工業技術などの地上の文化レベルは物語の骨格として大事な要素です。見事に答えが用意されており、感嘆しました。

 また、物語にちょっとしか出てこないアイテムや生き物などの話もたくさん聞かせていただきました。原作でもいまだに種明かしのされていない数々の疑問符には、実は***が+++で///だった。とか。そもそも●●●は×××で△△△だとか。もう人に言えないことをたくさん聞いてしまって、黙っているのに一苦労。そうそう、文字に関しても、原作を描く段階で五十音対応表が用意されていたとか。こういった“ひみつ”を聞かせていただけたのは大変うれしかったです。

 ただ、この“ひみつ”を知ってしまった以上、あのエピソードはアレにつながるから端折れないとか、これの表現はこうしないといけないだとか。前述の文字に関しても適当に書けないだとか。文字に関しては、設定の高倉(武史)さんが一手に引き受けてくださっていて、今では翻訳家さながらに奈落文字(ネザーグリフ)を書かれています。

 そして、放送開始後の皆さんの言葉もとてもうれしかったです。ネットなどで感想がダイレクトに伝わってくる時代で、素晴らしい原作であればあるほどに、お叱りも多々あるものと覚悟しておりました。放送直後は浮かれポンチになっておりましたが、日がたつにつれ、プレッシャーへと変わっていきました。もう後戻りできない、戻ればアビスの呪いが待っているのだと。みたいな。

――今後の見どころを教えてください。

 リコとレグの旅はこれから本番を迎えます。想像してみてくだい。アフリカの猛獣のいるサバンナを子供たちだけで旅をするとすれば、どんな試練が待ち受けるのでしょう。それがアビスという不可思議な穴の中ならなおのこと。そんな過酷な旅の中で二人(?)はどう乗り越えて行くのか。そしてオープニングに出てくるあの人この人とどのように出会うのか。どんな絶景が待っているのか。乞うご期待です!

――ファンへ一言お願いします。

 放送開始以来多くの反響をいただいている「メイドインアビス」。原作既読の方は、あのシーンはどうなっているんだろうとか、あのキャラクターはどう動くのだろうということをご自身の目でお確かめください。アニメからご覧の方は、子供たちの旅路に何が待ち受けるのか楽しみにしていてください。見終わって原作を読んでみるのも楽しい体験になるかと思います。

 最終話に向けてスタッフ一同、一丸となって制作を続けております。そう、放送は始まっていたのです! ご期待ください。

 アニメ「メイドインアビス」 副監督 垪和等(はが・ひとし) キネマシトラス 作画部顧問

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