今年、創刊50周年のマンガ誌「ビッグコミック」(小学館)の関係者に、名作の生まれた裏側や同誌について聞く連載企画「ビッグに聞く」。第10回は、作家で京都国際マンガミュージアムの館長も務める荒俣宏さんが登場。“師”である故・水木しげるさん、同誌の功績について聞いた。
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「ビッグコミック」が創刊した1968年、荒俣さんは「私が大学生になった頃。マンガの方向が分からなくなっていた時期でした。それまでマンガは子供向けのものだった。エロや下品なものはあったけど、マンガがもっと世界的なメディアにならないと思っている人もいた。『ビッグコミック』の登場によってマンガは、多面的なものになっていった。『ビッグコミック』はトンガってもいないし、丸くもない。一つの実験にもなった」と振り返る。
「ビッグコミック」の創刊号には、荒俣さんの“師”である水木さんのマンガも掲載された。「水木さんは創刊号に何を描いていいものやら、相当に苦労したようです。迷った挙句、自分の原点である欧米風ホラーやファンタジーを描いた。青年マンガ誌ということで、西洋的なモダンなセンスが必要になったのではないでしょうか。この原点回帰が渡りに船だった。いつまでも怪談や妖怪じゃなくて、スティーブン・キング的な展開を得たことで、表現世界が広がった」と説明する。
水木さんは「ビッグコミック」で自身の半生記「カランコロン漂泊記」などを描き、2013年には日常を描いた「わたしの日々」の連載を始めた。荒俣さんは「第2期には半生記を、第3期には身辺雑記を描いたら評判になりましたし。『ビッグコミック』が転機になった」と話す。
荒俣さんは「ビッグコミック」の功績について「マンガ家という職業を、勲章を与えるまでのものにした場所だったかもしれない」と分析する。「マンガ家で紫綬褒章をもらう人は少なくないです。一方、『ビッグコミック』を支えた“ビッグ5”の多くは、勲四等旭日章を授与されています。この二つは大きく違って、前者は褒章、後者は叙勲。技術がすごいだけではなく、品位が高く、国家と公共のために功績を積み上げた人への栄典です」というのだ。
“ビッグ5”の故・手塚治虫さんが勲三等、故・石ノ森章太郎さん、水木さん、さいとう・たかをさんが勲四等の叙勲を受けているが、白土三平さんは叙勲はない。荒俣さんは「白土さんは、国家の概念とは対極にいるような存在。同志たちで、手製で勲章を作って差し上げてもいい」と提案する。
マンガの電子化が進み、変革の時代を迎える中で、荒俣さんは「マンガの形は変わっていくでしょうし、『ビッグコミック』は国際的で多国籍なマンガ誌になってもらいたい。50年後には世界各国のマンガ家が描いて、世界の読者が同時に読んでいるかもしれません」と予測する。マンガの歴史を作ってきた「ビッグコミック」が、また新たな歴史を作っていくのかもしれない。
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