細田守監督:「ジャンルとしてのアニメには興味がない」 新作「未来のミライ」公開で

劇場版アニメ最新作「未来のミライ」について語った細田守監督
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劇場版アニメ最新作「未来のミライ」について語った細田守監督

 20日に公開された細田守監督の劇場版アニメ最新作「未来のミライ」は、甘えん坊の4歳の男の子“くんちゃん”と、未来からやってきた妹の“ミライちゃん”が織りなす「きょうだい」の物語だ。細田監督は、東映動画(現・東映アニメーション)の出身で、フリーに転身してからは劇場版アニメ「時をかける少女」(2006年)や「バケモノの子」(15年)といった話題作を作ってきた。そんな細田監督に、自身を取り巻く日本のアニメーション作品や、自身の次回作の構想について聞いた。

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 ◇劇場版アニメで見ているのは…

 細田監督は、06年に公開され、記録的なロングランとなった「時をかける少女」で注目され、その後、「サマーウォーズ」(09年)は16億5000万円、自身のアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」の第1弾として発表した「おおかみこどもの雨と雪」(12年)は42億2000万円、そして前作「バケモノの子」(15年)は58億5000万円と、着実に興行成績を伸ばし、同時に、国外でも高い評価を受けてきた。今回の作品も、5月に開催された第71回カンヌ国際映画祭開催期間中の「監督週間」にアニメーション作品としては唯一選出され、話題となった。

 そんな活躍を続ける細田監督がいる一方で、日本にはほかにも、興収250億円を超え、16年の年間興行成績1位を記録した新海誠監督の「君の名は。」や、スタジオジブリを退社した米林宏昌監督が、スタジオポノック第1回長編作品として発表した「メアリと魔女の花」(17年)、さらに、16年に封切られ、今なおロングラン上映を続けている(7月17日現在)片渕須直監督の「この世界の片隅に」など、アニメの話題作が後を絶たない。そういった日本のアニメーション界の現状や、ライバルともいうべきほかのアニメ監督の作品を、細田監督はどう見ているのだろう。

 その問いに、細田監督は「実は僕、アニメーション(映画)で見ているのは、宮崎(駿)さんの作品ぐらいで、宮崎さんの作品についても、『風立ちぬ』(13年)を何年か前に久々に見て、そのとき、『もののけ姫』(97年)以来だと言ったら、周りの人に『あなたアニメ監督でしょ』と驚かれました(笑い)。でも、自分の作品を作っていたら、時間がなくて見られないんです」と正直に打ち明ける。

 ◇アニメは一つの技法

 なんでも、「(アニメ)映画ですらそういう状況なので、テレビアニメについては全く見ていないですし、もっといえば実写映画すら見ていない」といい、今回の「未来のミライ」を作り終え、カンヌに向かう飛行機の中で、「やっと『シェイプ・オブ・ウォーター』(17年)を見ました」と頭をかくほどだ。そのため、現代の日本のアニメーションについて「語れることがないんです」と恐縮するが、ただ、自身がアニメーションというものをどのようにとらえているかに関しては、次のように話した。

 「僕は、アニメーションというものを一つの技法だと思っていて、アニメーションという技法を使って映画を作っているという意識が強いんです。つまり、ジャンルとしてのアニメーションというものには、実は、昔からあまり興味がなく、アニメーションという技法を使って、より映像表現、映画表現をもっと高めていきたいと思っているんです」と語った。

 ◇観客からの「指令」が次回作のヒントに

 これまで、3年ごとに作品を発表してきた。このペースで今後も制作を続けていくのだろうか。すると「次の作品を作るには、この作品を見ていただけて、製作費を回収して初めてスタートできるのであって、それを見届けない限りは、と思っています」と心境を語る。

 実際、今回の「未来のミライ」の企画にとりかかったのは、前作「バケモノの子」が15年7月に公開された2カ月あとだ。そして、「いつも思いますけど、その作品を見てくださった方々から、次はこういうふうなものを作れ、みたいな指令が、なんとなくニュアンスとして伝わってくるものがあるんです」と言葉をつなぐ細田監督。

 「時をかける少女」を作ったときは、周囲に、また恋愛ものを見たがっているムードがあり、その一方で、全然違うものやったらどうですかという声があったという。「結局、恋愛ものではない方に行きましたが、もしもあのとき、『細田さん、恋愛もの得意ですよね』という話に乗っかっていたら、今、ここにはたどり着いてないと思います」としみじみ語る。

 その上で、「そういうY字路が常にありまして、今回も、この作品を見てくださった方が、次に進む道を指し示してくださるのではないかな。ということで、今回はどういうふうに見てくださるかが、すごく楽しみです」と観客の反応に期待していた。映画は20日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 ほそだ・まもる 1967年生まれ、富山県出身。金沢美術工芸大学卒業後、91年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社。アニメーターを経て、97年にテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(第4期)で演出家に。99年「劇場版 デジモンアドベンチャー」で映画監督デビュー。筒井康隆さん原作の「時をかける少女」(2006年)で注目され、09年、自身初となるオリジナル作品「サマーウォーズ」を発表。11年、アニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立。作品に「おおかみこどもの雨と雪」(12年)、「バケモノの子」(15年)がある。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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