機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島:内田雄馬×廣原ふう 伝説のエピソードに感じたこと 生きるとは? 戦うとは?

「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」に出演する廣原ふうさん(左)と内田雄馬さん
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「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」に出演する廣原ふうさん(左)と内田雄馬さん

 アニメ「機動戦士ガンダム」のアニメーションディレクターやキャラクターデザインなどを担当した安彦良和さんが監督を務める劇場版アニメ「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」(6月3日公開)。「呪術廻戦」「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS-」「デリシャスパーティ プリキュア」などで知られる人気声優の内田雄馬さんがマルコス役、本作で本格的なデビューを果たす新人声優の廣原ふうさんがカーラ役で出演することも話題になっている。「ククルス・ドアンの島」は、1979年に放送された「機動戦士ガンダム」のテレビアニメ第15話のエピソードで、主人公のアムロ・レイ、ジオン軍の脱走兵ククルス・ドアンの交流を通じて、戦争の哀愁が描かれた。劇場版では、伝説の第15話を改めて描く。第15話は、内田さん、廣原さんが生まれる前に放送されたエピソードだ。二人は何を感じたのか? 「ククルス・ドアンの島」への思いを聞いた。

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 ◇戦うとは何か? 生きるとは何か?

 --「ククルス・ドアンの島」というエピソードを見て感じたことは?

 廣原さん このお話をいただくまでは「ガンダム」を見たことがなかったのですが、ファーストガンダムを最初から見て、「ククルス・ドアンの島」は、ほかとは少し違うお話ですし、不思議な感じがしました。戦争の悲惨さが色濃く表れたエピソードだと感じました。

 内田さん 正義とは何か? 見方や立場、場所などによって違いますし、その中で精いっぱい生きているお話です。戦うとは何か? 生きるとは何か? 何を大切に生きていくのか?と改めて考えさせられるエピソードです。大きなテーマですし、一言で説明するのは難しいのですが。

 --内田さんは、どのように作品に臨んだ?

 内田さん ファーストガンダムの中の「ククルス・ドアンの島」というエピソードを映画化するということで、自分がファーストガンダムに持っていたイメージを追うというよりも、今回この作品において何を描くのか?ということを大切にしようと臨ませていただきました。(自身が演じる)マルコスが何を考えているのか?に集中しようとしました。

 --廣原さんは本格的な声優デビューとなりました。

 廣原さん まさか「ガンダム」シリーズに携わらせていただけるとは思っていなかったので、正直すごくびっくりしました。もちろん「ガンダム」のことは知っていましたが、しっかり見たことがなかったんです。ファーストガンダムを見せていただき、これまで持っていたイメージが変わりました。ロボットが戦って、格好いい!というイメージだったんです。確かに格好いいのですが、戦争の悲惨さ、人間の心情が描かれていることを知り、この作品に臨む気持ち、姿勢が変わりました。

 --安彦監督は、廣原さんについて「ほとんどキャリアがない中でも、芝居の才能が十分だと思いました。経験が少ないことが魅力になるなと感じました」とコメントしています。

 廣原さん 恐れ多くて……。本当にまだまだなので、これからもっともっと頑張っていきたいです。

 --廣原さんは、ククルス・ドアンと島で生活する子供たちにとって母親のような存在のカーラを演じました。キャラクターの印象は?

 廣原さん 少し自分と似ているところがあると感じました。私は兄弟が多くて、7人兄弟の長女なんです。私も兄弟にとって母のような立場だったので、子供たちとの接し方など分かるところがありました。戦災孤児っていう立場は、自分とは違いますが、根本にある母のような優しさが自分の中でしっくりきたところもありました。

 --テレビアニメ版の「ククルス・ドアンの島」には、カーラと同じような立場のロランというキャラクターも登場します。

 廣原さん ロランの優しいイメージは、カーラと通じるものがありますが、テレビアニメでは深いところまで描かれていませんし、今回の映画は、カーラの強い思い、母のような大きな優しさを表現したいと考えていました。

 -ー内田さんは、島で生活する子供たちの中の年長者で、アムロと年齢が近いマルコスを演じました。マルコスというキャラクターをどのように捉えたのでしょうか?

 内田さん 島での生活が決して楽ではないことや、ドアンの存在の大きさを伝えることができるキャラクターだと思っています。マルコスは未熟ですが、みんなのために何とかしたいという思いがあるけど、力が足りません。アムロが来ることで、揺れ動き、自分なりに何とかしたいうという気持ちが空回りします。アムロと同じ世代で、アムロは特殊な力があるけど、マルコスは普通の少年なんですよね。


 ◇“アムロ”古谷徹に興奮 アムロがいる!

 --収録の様子は?

 内田さん 廣原さんと二人で収録しました。

 廣原さん 私自身アフレコで誰かと一緒にお芝居をさせていただくこと自体が初めての経験でした。ご一緒させていただき、マルコスを感じることができましたし、こういうふうに人の心をつかんでいくんだ!と勉強させていただきました。

 --アムロ役の古谷徹さんの演技を聞きながら演じた?

 内田さん そうです。興奮しましたね。アムロがいる!と感動しました。収録ではそんな気持ちではいけないですし、フラットでいなければならないんですけどね。内田として感動していました(笑い)。古谷さんが先に収録してくださっていたので、僕らはその演技を受けることができました。ありがたいですね。

 廣原さん 私もアムロがいる!とすごく感動しました。アムロと掛け合うことができるなんて!という気持ちでした。誠心誠意、頑張らせていただきました。

 -ー内田さんはこの作品ならではの挑戦はありましたか?

 内田さん 毎回新しいキャラクターを演じさせていただくので、毎回挑戦だと思っているのですが、今回は、マルコスの一生懸命に生きる姿をしっかり演じようと意識しました。マルコスは普通の少年で、一生懸命だけど、どうにもできない部分があり、もどかしい思いをしています。その中で頑張って生きているところを表現することで、みんながこの島で生きていることを実感できると感じていました。

 ◇普遍的な魅力 愛を感じて

 -ー完成した映像を見た感想は?

 内田さん 改めて「ガンダム」のテーマを考えさせられました。戦闘シーンをCGで描いていたり、今の時代に合わせてアップデートしている部分がたくさんありますが、「ガンダム」らしさもあります。エンタメとして成立しながら、テーマを感じるのは、やっぱすごいです。普遍的なものがあるからなんですよね。

 廣原さん 劇場で見る感動は格別でした。戦闘シーンの迫力はもちろんですけど、それぞれのキャラクターの心の成長を感じました。私のように「ガンダム」を見たことなかった人も、作品が伝えたかったものを感じていただけるはずです。

 --廣原さんにとって「ガンダム」は特別な作品になった?

 廣原さん 大きな勇気になりました。いつかは作品に出たい!という思いがあったのですが、まさか最初の一歩が「ガンダム」になるとは想像もしていませんでした。新人の私にとって、こんな貴重な経験はないですし、精いっぱい演じさせていただきました。本当に光栄です。

 -ー内田さんの「ガンダム」シリーズへの思いは?

 内田さん 子供の頃から見ていたシリーズですし、出演させていただけることがやっぱりうれしいですね。アニメ史を作ってきたシリーズで、今でも愛されて、40年以上の時を経て、こうして「ククルス・ドアンの島」という作品が制作されました。クリエーターの皆さんもそうですし、皆様の愛を感じています。

 -ー最後にメッセージをお願いします。

 内田さん 「ククルス・ドアンの島」というエピソードを映画として制作する意味を感じていただけるはずです。生きることは?というテーマを感じていただけるとうれしいです。ぜひ何度も見てください。よろしくお願いします。

 廣原さん 初めての経験ばかりでしたが、カーラという人間を必死に表現しようと頑張らせていただきました。私みたいに今まで「ガンダム」を見てこなかったっていう人も、「ククルス・ドアンの島」を見れば、ほかの作品も見たくなるはずです。この作品を通して「ガンダム」の素晴らしさを知っていただきたいです。

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