人気アニメ「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」の最終章の第4話のDolby Atmos(ドルビーアトモス)バージョンの試写会が10月3日、東京都内で開催され、3DCGI監督、特技演出の柳野啓一郎さん、音響監督の岩浪美和さんが登場。同作の音響とCG を活用した映像制作について語った。
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第4話の戦闘シーンでは、砲撃の位置や場所に応じて細かく音の“出どころ”が変化するほか、恐怖すら感じられる低音、耳が痛くならない高音など、音の分離と質感にもこだわったという。ドルビーアトモス版は、スクリーン裏をはじめ、サイドや後方の壁、天井に設置された劇場のスピーカー群を個別に制御する。位置情報は約1000段階で設定できるため、岩浪さんは「実質10億個のスピーカーを使っていると考えてもらってよい」と語り、「後方から(鑑賞者の)真上を通過して前方へ移動する音」なども表現できるという。
シナリオや絵コンテにも目を通しているという岩浪さんは「(元の)コンテより盛っていますよね?」と質問すると、柳野さんは「大分、変わっていますね。でも、監督の了承は取っています(笑い)」と回答。コンテに描かれた戦車の動きから意図を読み取る中で「自然と演技ができてくる。勝手に戦車が動き始める」と説明した。
戦車の3Dモデルは、テレビシリーズから細かくバージョンアップしているといい、第4話の合計カット数は1000カットを超えるが、そのうち約800カットがCGで制作され、戦闘シーンに力を入れているという。
映像の情報量が膨大なこともあり、岩浪さんは第4話で「今までのように出しゃばってはいけない。音でドヤってはいけない」と映像をサポートする役割に徹したようだ。柳野さんは「立体的に包まれるような音響によって、映像がさらに分かりやすく、より楽しめるようになっている。映像と音との組み合わせの完成度はかなり上がったのではないか」と語った。
柳野さんは“特技演出”という肩書について「映像としてどうやって見せるべきかを計算した上で、CGが一番効果的に使えるように検討、実行する」と説明。
アクロバティックな戦闘シーンの組み立てについて聞いた岩浪さんは、柳野さんの“師匠”にあたる板野一郎さんのアニメ演出“板野サーカス”をなぞり「柳野サーカスだね!」と絶賛。柳野さんは「怒られる」と苦笑いを浮かべた。
岩浪さんは「雪原と渓谷での砲撃音の違い」についても説明。「雪は吸音体なので音は響かない。逆に渓谷や砂漠は周りに岩山があるので音が反射する。そういう想像上のリアリズムを意識した」と語った。
柳野さんは第4話について「今までにないくらい、アクション密度が高い内容です。初見では迫力や戦闘の展開を楽しんでいただけると思いますし、2回目以降も、キャラクターや戦車の一つ一つの行動に全て意味があるので、必ず発見があると思います。そうやって何度も楽しめる作りになっています」と語り、岩浪さんは「皆さんのお力で、ドルビーアトモスは良いよ!というのを広めてください。それだけです。お願いします!」と呼びかけた。
「ガルパン」は、戦車を使って戦う“戦車道”が華道や茶道などと並んで“たしなみ”とされる世界を舞台に、少女たちが力を合わせて戦車道の全国大会優勝を目指すアニメ。テレビアニメが2012~13年に放送され、劇場版アニメが2015年に公開された。最終章の第1話が2017年12月、第2話が2019年6月、第3話が2021年3月に劇場上映された。第4話が10月6日から劇場上映されている。
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