話題のアニメの魅力をクリエーターに聞く「アニメ質問状」。今回は、美少女化したクトゥルー神話の神々たちのドタバタを描いた人気ライトノベル原作の「這(は)いよれ!ニャル子さん」です。長澤剛監督に作品の魅力を語ってもらいました。
ウナギノボリ
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−−作品の概要と魅力は?
ある夜、平凡な高校生だった八坂真尋はえたいの知れない怪物に襲われる。間一髪のところで、いとも軽々と(そしてえげつないほど残忍に)真尋の身を守ってくれたのは、クトゥルー神話の邪神を名乗る銀髪碧眼(へきがん)の美少女だった。「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る混沌、ニャルラトホテプです!」
最初の決めぜりふからしてお察しの通り、これはなかなか厄介な……もとい、ユニークなヒロインの登場です。このハイテンションでハチャメチャで、真尋の日常を振り回すニャル子さんこそ、この作品の最大の魅力なのです。
何しろ、宇宙からやって来た這い寄る混とんです。地球人の常識は通用しません。そのくせ地球のエンタメ(特に、日本のマンガやアニメや特撮やゲームなど)に異様に詳しかったりします。そして、ニャル子さんはすきあらば真尋にスキンシップをとりまくります。這い寄ります。それを真尋は最初は本気で嫌がりながら、そして次第になれ合いになりながらツッコんでいく。そうしたキャラクターの掛け合いを楽しんでいただけると思います。そうして繰り返されるボケとツッコミの間にも、真尋は宇宙規模での壮大な事件に巻き込まれていき、地球人よりもはるかに強大な力を持ったクトゥルー神話の邪神と対峙(たいじ)することになります。果たしてどんな結末を迎えるのか……。
さらに、生ける炎・邪神クトゥグアのクー子、風属性最高位・邪神ハスターのハス太も交えて、真尋の日常はますます混とんとしていきます。普段はクールな言動のクー子ですが、実はニャル子のことが大好きで、ニャル子と一緒に気持ちいいことがしたいとしか考えていなかったり。普段は素直でいい子で可愛らしいハス太ですが、実は男の子で、ニャル子に対抗して真尋くんの赤ちゃんがほしいと迫ってみたり。怒とうのハイテンション・ラブ(クラフト)コメディーをお楽しみください!
−−アニメにするときに心がけたことは?
この作品における最大の力点は、とにかく「怒とうのハイテンション混とんコメディー」を貫き通すことです。
ニャル子さんと真尋の掛け合いはテンポよく。ニャル子さんは、ひたすらいちずに。真尋さんのことが大好きです、というニャル子さんのせりふもどんな場面でどんなふうに真尋に受け止められるのか注目してほしいです。
クー子とハス太も負けじと、ニャル子と真尋を奪いに来ます。時に欲望のままに。時に激しく真尋にツッコまれ。初めはクトゥルー神話の邪神たちの無軌道ぶりを本気で嫌がっていた真尋も、いくつかの事件を通じてその関係はかけがえのないものになっていきます。真尋がどれだけデレるか。そのヒロイン(?)ぶりにもぜひご注目ください。
そして忘れてはならない、この作品のもう一つの力点は、原作にある、ニャル子さんが愛してやまない地球産のエンタメをリスペクトした、オマージュの数々!です。
これはとっても危険で、まず、やりすぎるといろいろなところに謝らなければいけないのと、それより何より、こうしたオマージュは好き嫌いがはっきり分かれるのでリスクが高く、その点でも気を付けなければなりません。しかし、尻込みしてばかりでは原作の持つ魅力は伝わらなくなってしまいますから、常にギリギリのところまで攻めるように心掛けています。あえて!行けるところまで!
−−作品を作るうえでうれしかったこと、逆に大変だったことは?
うれしかったことといえば、「這いよれ!ニャル子さん」第1巻のタイトルを書店で見かけた時から「ははぁ、コレはニャルラトホテプの仕業に違いないな?」とピンときて、いざ読んでみると無性にハマってしまって、ニヤニヤしながら楽しませていただいておりました。
個人的なことで恐縮なのですが、学生時代(もう20年近くも前になります)にクトゥルー神話をモチーフにしたTRPGを遊んでいた自分がこの作品に関われたことは望外の喜びです。ですのでクトゥルー神話ファンの皆様に失望されないよう、そこにも(こっそり)こだわっていければなと思っております。ただ、なにぶんブランクが……(苦笑) 一生懸命、クトゥルー神話再入門しているところです。
そして、最大の喜びといえば、多くのスタッフが力を合わせて、ひとつの作品として完成させること。これ以上の喜びはありません。本当に、多くのスタッフが楽しんでこの作品に関わってくれて、支えてくれています。
実は「這いよれ!ニャル子さん」は今回で“SAN度目”のアニメ化なのですが、ドラマCDと2度のアニメとメーンキャストの方々は変わりません。それだけ長くニャル子さんと付き合い、理解してくださっているのですから、これはもう鬼に金棒です。邪神に宇宙C.Q.C.です。
アフレコ現場も、和気あいあいとそしてテンション高く(午前中であるにもかかわらず!)楽しんで収録しています。遊びの部分も多い作品ですので、その点でもキャストの皆さんにも期待しているのですが、それはそれはもうバッチリです! パーフェクトです! 毎回、アイキャッチ(CM前後につく区切りのカット)を変えているのですが、その度に「なんか面白くリアクションしてください」というムチャぶりにも、皆さん華麗なアドリブで応えてくださいます。コレ、結構すごいことですよ!
逆に大変だったこと。ひとつは、原作ものに必ずついてまわる「何を残して、何を外すか」という取捨選択です。アニメでは尺の都合もあって、すべてのシーン、すべての地の文、すべてのセリフを再現することはできません。必要なストーリーだけを追いかけるのでは、遊びの部分がどんどん削られていってしまう。それではこの作品の魅力は伝わらない。かといって、制限のある中でアレもコレもは詰め込めない…… 大胆に決断することが必要です。「自分が好きだったこのシーンがないじゃないか!」というおしかりはごもっともです。なるべく多くの方に楽しんでいただけるよう、そこの見極めはしっかりとやっていきたいと思います。
そしてもうひとつ。多くのパロディーをどう生かすか。アニメにして見栄えのするやり方は何か。このあたりも、なかなか大変だったりします。逢空万太先生のセンスには脱帽です。何度も読み返しては「うまいなあ。面白いなあ」と感心することしきりなのですが、その面白さに少しでも近づけるよう頑張っているところです。
−−今後の展開、読者へ一言お願いします。
これからもニャル子さんは、ひたすら真尋に這い寄っていきます。それに対して真尋がどうツッコんでいくのか。フォークの出番は増えるのか減るのか。果たして真尋にデレは来るのか。まずは、そのあたりに注目してください。これからはクー子やハス太のエピソードもあって、どんどん魅力が増していきます。ニャル子さんだけでなく、クー子やハス太のファンも少しでも増えてくれるとうれしいです。
そしてそして、宇宙規模の壮大なスケールの事件や陰謀も次々と襲いかかってきます。果たして真尋の“SAN値”は、最終回まで持ちこたえることができるのか!? まだまだニャル子さんのやることなすことから目が離せませんよ! 気になってしまったアナタは、すでに混とんに這い寄られています。
さぁ、テレビの前でニコニコ生放送の前でご一緒に! うー! にゃー!
監督 長澤剛
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