銀の匙:作者の母校は出願者数が倍に 作品の魅力を解説

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 「鋼の錬金術師」で知られる荒川弘さんのマンガ「銀の匙 Silver Spoon」が人気だ。11日発売の8巻でコミックスの累計発行部数が1000万部に達することも発表されており、コミックス1巻の発売(2011年7月)からわずか2年間で大台を達成する。また同日からフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」でアニメの放送もスタート。人気に拍車がかかること必至の同作の魅力を解説する。(毎日新聞デジタル)

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 ◇ベースは“百姓貴族”の作者の実体験

 「銀の匙」は、荒川さんが11年4月から「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中の青春マンガ。進学校の受験戦争に行き詰まった少年・八軒勇吾は、教師の勧めで大蝦夷農業高校(エゾノー)に進学する。将来の目的を明確に持つクラスメートに劣等感を抱いていた八軒だったが、個性豊かな仲間たちや今までの常識を覆す出来事ばかりの農業高校での生活を通して、成長していくストーリーだ。

 「鋼の錬金術師」のダークファンタジーから一転、農業高校を舞台にしたコミカルな作風は連載当初話題を呼んだが、同マンガは荒川さん自身の体験をもとにしている。北海道で酪農を営む家で育ち、農業高校に進んだ荒川さんの、農家や農業にまつわるエピソードはエッセーマンガ「百姓貴族」(新書館)にも詳しいが、「銀の匙」では主人公の八軒の成長を軸に“あり得ない”ことだらけの農業高校での生活が生き生きと描かれている。

 「毎朝4時起きの馬術部の活動」「学校の敷地一周(20キロメートル)のマラソン」「入浴時間15分!の寮生活」「全学科を総動員してのピザ作り」など主人公を次々と襲う“濃厚”な出来事は読者の目にも新鮮に映る。一方で、産卵成績が悪い鶏はスモークチキンになるし、可愛い子豚もいずれはハムやベーコンになる。そんな常に「生と死」と隣り合う農業の現実も描かれ、決して強くはない主人公が悩み、戸惑いながらも自分なりの答えを出していく姿から目が離せない。

 ◇舞台の高校の出願者数が倍増!

 作品の人気はモデルとなった実在の農業高校にも飛び火している。荒川さんの母校で作品のエゾノーのモデルにもなった帯広農業高校(北海道帯広市)の酪農科学科では、今春の高校入試の出願者数が倍増。作品の人気の影響と見られており、道外からの見学者も多数訪れ、農業高校への関心も高まっているという。

 挫折を味わいエゾノーに「逃げて」きたという思いにとらわれていた八軒だったが、エゾノーで出会った仲間や出来事を通してだんだんと自分自身を肯定できるようになっていく。今後、八軒は自分の問題や自分自身にどう向き合っていくのか、そして八軒が思いを寄せる同級生・御影アキとの関係は?。ますます盛り上がりそうな同作から目が離せない。

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