テレビゲーム業界の雄・任天堂がついに“禁断”のスマートフォン事業に乗り出す。同社はこれまで一貫して、利益を徹底的に追求するスマートフォン用ゲームの課金システムに疑問符を付けていただけに、新たなビジネスモデルの構築ができるかがカギを握りそうだ。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
会見でのポイントは二つ。マリオなど任天堂の人気キャラクターを使用したゲームを両社でスマートフォン向けに開発・運営すること。そしてお互いに約220億円の株式を相互に持ち合う資本提携だ。
一見すると、任天堂のキャラクターを使ってスマホゲームを制作できるDeNAにうまみがあると思えるが、必ずしもそうではない。スマホゲームの利益の源泉になっているフリー・トゥー・プレー(基本利用料無料のアイテム課金)について、任天堂の岩田聡社長は「一概に否定はしない」と前置きした上で、「任天堂のIP(知的財産)を使う以上、任天堂が納得しない方法での展開はありえない」と述べた。
スマホゲームの売り上げは、一部ユーザーの高額課金に支えられている実態があるが、そのビジネスモデルをそのまま受け継ぐわけではないことを匂わせている。岩田社長は「(スマホゲームを)やる以上は絶対の勝算をもってやりたい」としたが、新たなビジネスモデルは明示されず、物足りなさがある。
スマホゲームに初めて挑む任天堂が、DeNAの持つノウハウを得るのは強みだが、懸念もある。いわゆるスマホゲームは、まずサービスを開始し、運営しながら完成度を高め、生き残ったゲームを育てていく手法だ。ところが、任天堂が得意にしてきたのは最初から完成度の高いゲームだ。
約30年かけて育ててきたキャラクターの価値の毀損(きそん)を恐れる任天堂が、スマホゲームの“常識”とどう戦うのか。質を重視すればスピードが不足するのは確実で、ゲームのタイトル不足となれば、両社の考えに溝が生まれる。さらに言えば、任天堂が家庭用ゲーム機事業にこだわっており、スマホ事業との“二正面作戦”をどうしのいでいくのか注目される。
ゲーム業界に詳しいゲームライターの小野憲史さんは、任天堂がこれまで他社との協業を苦手にしてきた歴史を挙げながら「具体的なゲームアプリが出ないと判断は難しい。またコンテンツ以上に、スマートフォン事業で新しいビジネスモデルの構築ができるかだ」と指摘している。
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