バクマン。:初代&2代目担当編集者に聞く原作エピソード ジャンプ3原則は存在しない!?

「週刊少年ジャンプ」編集部で「バクマン。」初代担当の相田聡一さん(右)と2代目担当だった門司健吾さん
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「週刊少年ジャンプ」編集部で「バクマン。」初代担当の相田聡一さん(右)と2代目担当だった門司健吾さん

 大ヒットマンガ「DEATH NOTE」でコンビを組んだ原作・大場つぐみさん、マンガ・小畑健さんによるマンガが原作の実写映画「バクマン。」(大根仁監督)が3日に公開された。映画は、俳優の佐藤健さんと神木隆之介さん演じる高校生コンビがマンガ誌「週刊少年ジャンプ」で連載する中でのドラマが描かれており、「ジャンプ」編集部との生々しいやり取りも見どころだ。原作の初代担当だった相田聡一さんと2代目担当だった門司健吾さんに映画と原作にまつわるエピソードなどを聞いた。

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 ◇山田孝之の“服部”は「なるほどと思った」

 「バクマン。」は、主人公のサイコーこと真城最高(佐藤さん)が、シュージンこと高木秋人(神木さん)に誘われてコンビを組み、週刊少年ジャンプで連載する夢をかなえて二人三脚で奮闘するストーリー。サイコーとシュージンが編集部と時に協力、時には対決して葛藤する姿が映画でも見どころの一つになっている。原作に登場する編集者のモデルにもなっている相田さんは、実写化について「ニュアンスが変わったりとかはありうるんだろうなと思っていたけれど、出来上がったものに文句も注文もなかった」と明かし、門司さんも「キャラが変わってたり違うところもあるんですけれど、違うから嫌だという感情は全然なかった」と感想を語る。

 映画はダブル主人公の佐藤さん、神木さんのほか、山田孝之さん、染谷将太さん、桐谷健太さんなど豪華な顔ぶれがそろった。中でも主人公2人と編集部をつなぐキーになるのが、2人を最も近くで支える編集者・服部哲役で出演している山田さんだ。相田さんは「山田さんは文系の匂いがありますよね。最近は武闘系(の役を)やってますけど、編集者役はなるほどなって思いました。編集者でいてもおかしくないたたずまいがあって」と編集者目線でキャスティングの感想を語る。また、映画の中の実際に現実にいそうなマンガ家キャラを聞いてみると、「(桐谷健太さん演じる)福田はいそうですね。兄貴肌」と門司さん。ちなみに、原作でマンガ担当の小畑健さんは、相田さんいわく「あえて言うなら(佐藤さんが演じる)サイコー。外見的には全然違いますけど」と笑う。

 ◇「ジャンプ3原則」は存在しない

 映画では、「友情・努力・勝利」が物語の重要なテーマに据えられている。有名な“ジャンプ3原則”といわれるものだが、相田さんと門司さんによれば、「実はそんなものは存在しない」という。「友情、努力、勝利がマンガにおいて気持ちいいものなのは間違いないけど、編集部員で、ジャンプだからそれに基づいて作らなきゃいけないと思っている人はおそらく一人もいない」と門司さん。相田さんは「努力するマンガってつまんないじゃん、と思うこともある。修業パートとかいらないんですよ、マンガに。例えば『ONE PIECE』はジャンプのど真ん中だけど、ルフィが努力している(描写がある)かというと、ない」と笑う。門司さんも「ジャンプは、個々人が好きなように好きなマンガを作家さんと作って勝負しろというやり方。結果が出ればオーケーだし、違うやり方でやってもいい。“ジャンプ流”はないんです」と“意外”な答えが返ってきた。

 ただ、制約がない編集部にも、指針は存在する。映画でも語られる「読者アンケート」がそれだ。「ジャンプの編集者である限りは、アンケートの結果からは逃れられない」と相田さんは言う。「アンケートの順位を上げるように頑張るのが一番早い(結果が出やすい)んですよ。いろんな考え方はあっていいけど、それが一番シンプル。僕が(『バクマン。』の)担当の時もそうやって人気が上がるようにやっていましたね」と明かす。門司さんも「(描かれていることを)全部やっていたわけじゃないけど(笑い)。たとえば、あるキャラを出してアンケートが下がったら、『ああコイツ人気ねえんだ』と分かる。じゃあ出すのやめよう、と。マンガ内“出禁”です(笑い)」と制作の裏側を語る。

 ちなみに、原作「バクマン。」は原作者の大場さんから「マンガ家を目指すマンガを描きたい」と持ち込まれた企画から誕生した。相田さんは「当時、大場先生が『子供のなりたい職業にマンガ家が浮上している』とおっしゃっていて。それじゃ描いてみてください、というのがスタート」と明かす。なお、「バクマン。」のタイトルの由来は小畑さんが提案した「ガチマン。」という仮タイトルから。それが大場さんに渡り、いろいろな意味が込めやすい「バク」を付けて完成した。

 ◇「ジャンプ」のことを描いてるわけではない

 「バクマン。」について相田さんは「内実を描いているようで描いていない。うそもいっぱい描いてる」と明かし、「もちろん『ジャンプ編集部』がモデルではあるんですけど、でもジャンプのことをそのまま描いているわけではなくて。一つの編集部の例です」と説明する。自分たちをモデルにした登場人物も登場するが、「僕らを描いているわけではないので。見た目などが似ている人はいるかもしれないですけど、どこかにいそうな編集者の大げさにキャラにしたという感覚。自分たちだとは思っていないですね」という。

 原作が大ヒットし、アニメ化もされいよいよ実写映画も公開された。「友情・努力・勝利」を背骨に、連載が終了してもなお話題を呼び続ける「バクマン。」だが、その魅力とはどこにあるのだろうか。「『ジャンプ』のリアルマンガ家ライフマンガ、リアル編集者ライフマンガというより、マンガを題材にどう盛り上げるのかということを重視してきた」と門司さんは話す。「本質は、主人公がマンガ家を目指す話。主人公がどうライバルたちと出会って成長していくか、その中でどう面白さを出していくか」と言い切る。いってみれば「友情・努力・勝利」を地でいく“ジャンプらしいジャンプマンガ”だが、そのあたりが長く支持されている所以(ゆえん)なのかもしれない。映画「バクマン。」は3日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。

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