不死の新生物と政府の戦いを描いた人気マンガ「亜人」の劇場版アニメ第1弾となる「衝動」(安藤裕章監督)が27日に公開された。劇場版は3部作の予定で、来年1月からテレビアニメも放送される注目作だ。
ウナギノボリ
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何度死んでも生き返る希少な新生物・亜人が発見された世界が舞台。優等生の少年・永井圭は、交通事故をきっかけに不死の亜人であることが判明し、“実験体”として警察・特殊国家機関に追われ、すれ違っただけの一般市民からも襲われるようになる……というサスペンスストーリー。2012年からマンガ誌「good!アフタヌーン」(講談社)で連載中の桜井画門さんのマンガが原作だが、特殊な世界観や重厚なストーリーもあって話題となり、14年3月には、書店員ら選ぶ「マンガ大賞2014」にノミネートされた。
序盤は、主人公が、日本全体を敵に回すような絶望的な構図で、見る者を作品世界にぐいぐいと引き込む。人間のダークサイドである残虐性や裏切り、欲望、おろかさなどが、見る者の心を逆なでする。そこに主人公の判断の甘さも加わり、行き場のない逃走劇というお先真っ暗な状況の中で、唯一の“希望”に見えるのが、圭の友人である海斗の存在だ。こういった陰と陽の“落差”もあってか、時折顔をのぞかせるかすかな希望が魅力的に映る。それだけでなく、「亜人」の秘密が徐々に明らかにされていく過程も、“禁断の扉”を開けていくような感覚でたまらない魅力の一つだ。そして、亜人同士のバトルも見応え十分で、見る側が疲れを感じるほど物語の密度が濃い。
ただし一つ、懸念点を挙げるとすれば、CGアニメに対する抵抗感だろう。このアニメは、セル画(2D)のような表現を3DCGで実現する「セルルック」という技法が用いられている。製作したポリゴン・ピクチュアズは、アニー賞やエミー賞を受賞するなど、CGアニメでは世界の最先端を行っているスタジオだ。
セルアニメのように、キャラクターの表情が豊かに感じられるというわけではない。だが、もともと表情の豊かさが求められるタイプの作品でもないことも手伝ってか、最初あった微妙な違和感は、見るうちに全く気にならなくなった。セルルックは、我々の身近なものでない宇宙空間やロボットの描写に向くとされ、逆に身近なものであふれる「現代劇」は苦手とされていたが、現代劇でも違和感のないところまで来たといえる。
なお、瀬下寛之総監督は、CG映画「ファイナルファンタジー(FF)」にもアートディレクターとして関わり、約30年もCGに関わってきたスペシャリスト。もちろん「亜人」にも、設定にこだわり抜くハリウッド仕込みのノウハウが生かされている。今後のCGアニメのマイルストーンの一つとなりえるだけに、アニメに興味がある人は、一度見ておくべき作品といえる。27日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほか全国で公開。(河村成浩/毎日新聞デジタル)
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