注目映画紹介:「『たまゆら~卒業写真~』第3部 憧-あこがれ-」 夢や目標を絞る難しさを痛感

劇場版アニメ「『たまゆら~卒業写真~』第3部 憧-あこがれ-」のワンシーン(C)2015 佐藤順一・TYA /たまゆら~卒業写真~製作委員会
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劇場版アニメ「『たまゆら~卒業写真~』第3部 憧-あこがれ-」のワンシーン(C)2015 佐藤順一・TYA /たまゆら~卒業写真~製作委員会

 “安芸の小京都”と呼ばれる広島県竹原市を舞台にしたアニメ「たまゆら」シリーズの劇場版アニメ第3弾「『たまゆら~卒業写真~』第3部 憧-あこがれ-」(佐藤順一監督)が28日に公開される。「たまゆら」は、写真が好きな女子高生・沢渡楓(さわたり・ふう)と友人との日常を描いたアニメで、2010年にOVAが発売され、テレビアニメが二度にわたり放送された。劇場版アニメ「たまゆら~卒業写真~」は、楓たちの高校卒業までの1年間を描くシリーズの完結編となる4部作で、第3部では、高校3年の秋を迎え、仲よし4人組の1人である桜田麻音が家業を継ぐかどうかも含め、進路を決められずに悩む日々を軸にストーリーが展開していく。

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 同級生たちが志望校を決めていく中、桜田麻音(声・儀武ゆう子さん)はイラストや音楽、芝居など興味のあることが多すぎて進路を決められずにいた。両親が営む実家の旅館「のどか亭」を継ぐことも夢の一つだったが、麻音の父(声・古川登志夫さん)は旅館を継がせるつもりはないと宣言し、麻音は戸迷う。竹原の街並み保存地区が竹灯りで照らされる「憧憬の路」の日、沢渡楓(声・竹達彩奈さん)が使い続けてきた父の形見のカメラ・ローライ35Sが故障。日の丸写真館の店主・マエストロ(声・中田譲治さん)は、すぐに直せるというが、なぜか楓の心は落ち着かず……という展開。

 第1部では楓が写真の仕事をしたいと決意し、第2部では塙かおる(声・阿澄佳奈さん)と岡崎のりえ(声・井口裕香さん)のエピソードが描かれた。そして第3部となる今作は、仲よし4人組最後の一人、麻音にスポットが当てられている。多趣味な上、家業もあるという麻音がどんな決断を下すかにはとても興味があった。それにしてもやりたいことや興味がたくさんある中から一つを選択するのはなかなか難しく、「卒業写真」シリーズで4人がそれぞれ決意しているのを見て、そのころの自分はどうだったかと省みてしまった。第3部にして4人全員の持ち回りエピソードが終わったわけだが、欲をいえばもう少し長尺の群像劇を見てみたいという思いもある。そうはいっても30分弱のエピソードを積み重ねていくのが「たまゆら」らしい見せ方であり、第3部でもぶれることのない優しい世界観と温かみあふれる友情にほっこりさせられる。いよいよ残すところは2016年2月20日に公開予定の第4部だけとなったが、彼女たちがどんな卒業を迎えるのか期待して待ちたい。28日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で2週間限定で順次公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
 

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