注目映画紹介:「ライチ☆光クラブ」 ダークファンタジーの世界を背景に少年たちの思春期を描く

映画「ライチ☆光クラブ」のワンシーン (C)2016「ライチ☆光クラブ」製作委員会
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映画「ライチ☆光クラブ」のワンシーン (C)2016「ライチ☆光クラブ」製作委員会

 俳優の野村周平さんの主演映画「ライチ☆光クラブ」(内藤瑛亮監督)が13日に公開される。映画は、劇団「東京グランギニョル」が1985年に上演した舞台を基に、古屋兎丸さんが2005年にマンガ化した「ライチ☆光クラブ」と「ぼくらの☆ひかりクラブ」が原作となっている。黒い煙に包まれた蛍光町を舞台に、廃工場を秘密基地にした「光クラブ」に集まった醜い大人たちを嫌う14歳の少年たちの残酷で多感な思春期を描く。タミヤ役の野村さんほか、古川雄輝さん、間宮祥太朗さん、池田純矢さん、松田凌さんら若手俳優が顔をそろえた。

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 工場から黒い煙が立ちのぼり、油にまみれた蛍光町の廃虚へ、深夜に集まる9人の中学生がいた。秘密基地の名は「光クラブ」と呼ばれ、強いカリスマ性と天才的頭脳を持つゼラ(古川さん)が8人の少年たちを従えている。メンバーは醜い大人を否定し、自分たちだけの世界を作るため、兵器として機械(ロボット)を開発。ロボットにライチ(声・杉田智和さん)と名付け、光クラブに美しい希望をもたらす少女の捕獲を命じる。一方、小学生の頃、ダフ(柾木玲弥さん)とカネダ(藤原季節さん)の3人で光クラブを作ったリーダーのタミヤ(野村さん)は、ゼラの思想に危険性を感じ始め……というストーリー。

 今作はもともと舞台演目として誕生し、その後、古屋さんがコミカライズした2作品をベースにして映画化しているが、両作をうまくミックスし、原作ファンを裏切らないストーリーに仕上がっている。世界観としては耽美(たんび)で退廃的、そして残酷さも漂うダークファンタジーだが、誰しもが通過してきたであろう排他的でもろくもある思春期を迎えた少年たちの揺れ動く心情も描き出されている。少年同士の裏切りや愛憎などが妖(あや)しげに、また時にユーモラスに描かれ、芝居がかったせりふ回しなどもあり、世界観的に好みは分かれそうだが、若手キャストの鬼気迫る狂気ぶりは真に迫っている。ロボットのライチがかもし出す切なさには胸を打たれた。13日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開され、27日から全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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