注目映画紹介:「小さな村の小さなダンサー」 亡命した中国人バレエダンサーの半生描く

「小さな村の小さなダンサー」の一場面。(c) Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia
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「小さな村の小さなダンサー」の一場面。(c) Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

 亡命してなお活躍した中国のバレエダンサー、リー・ツンシンさんの半生を描いた「小さな村の小さなダンサー」(ブルース・ベレスフォード監督)が28日、公開された。61年に中国山東省の貧しい村で、7人兄弟の6番目として生まれたリーさんは、毛沢東による文化政策によってバレエの英才教育を受けることとなり、やがて渡米。自由な空気にけおされながらもバレエのレッスンに精力を傾け頭角を現していくが、やがて、中国人としてのアイデンティティーを試されることになる……というストーリーが展開する。

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 リーさんが渡米したときの79年ごろの映像が冒頭に流れ、中国の過去をところどころに映像として挿入することで、彼の半生を組み立てていく。踊ることで、自らに過酷な運命を強いてきた男性の姿を描く一方、芸術ですら政治的プロパガンダに利用しようとした当時の中国政府の様子が垣間見られ、興味深い。

 米アカデミー賞作品賞に輝く「ドライビングMissデイジー」(89年)のベレスフォード監督がメガホンをとった。脚本を担当したジャン・サーディさんも、アカデミー賞にノミネートされた「シャイン」(95年)の脚本を手掛けた人物。いずれも実力派だ。

 リーさんの自伝が原作。真実の重みが作品に力を与える。リーさんの、バレエにかける情熱、祖国に対する思いが、スクリーンごしに伝わってくる。そしてまた、古今東西、いつの時代においても変わらない、子を思う親の心も。

 成人してからのリーを演じるのは、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパルのツァオ・チーさん。共演に、カイル・マクラクランさん、ブルース・グリーンウッドさんら。リーの母親役のジョアン・チェンさんの、神々しいまでの演技が印象に残る。28日からBunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)、シネスイッチ銀座(東京都中央区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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