東京国際映画祭5日目の27日、コンペティション正式出品作「一枚のハガキ」が上映され、新藤兼人監督、女優の大竹しのぶさん、俳優の豊川悦司さん、六平直政さんが登場し、会場からの質問に答えた。終戦後、豊川さん演じる啓太が、大竹さん演じる亡き戦友の妻・友子と夫婦になる……という結末に、2人はどこから恋愛感情を持ち始めたのか?と観客から質問が及ぶと、豊川さんは「友子さんに恋愛感情を持ったのはラストシーンの後だと思います」ときっぱり。それに対し大竹さんは「今の言葉を聞いてショックでした。私は(啓太と)出会った時から、ちょっといいかなと思っていました。ちゃんとお風呂も入れてご飯も作ってあげたのに、男なんてこんなもんだなと思いました」と話し、会場を笑わせた。
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新藤監督は現在98歳と日本最高齢の映画監督で、本作が「最後の映画」だと宣言しており、「戦争は人間を破壊するばかりだけではなく家族全体も破壊するということをテーマに、同志と気に入った俳優さんたちと、いつ死ぬか、いつ死ぬかと思いながら撮りました。それはスタッフや俳優さんも新藤はいつ死ぬかと思っていたと思います。撮影中は生きなきゃいけない、仕事をしなきゃいけないという思いで撮ってまいりました。スタッフの皆さん、そして最後に私自身に感謝しています」と語り、会場から盛大な拍手を受けた。六平さんは「この作品が49本目の映画ということで、100歳で50本目を撮っていただきたい」と監督にエールを送った。
映画は、太平洋戦争末期に100人の中年兵が招集され、くじ引きで次の戦地が決められることになる。松山啓太(豊川さん)は、フィリピンへ赴任する森川定造(六平直政さん)の妻・友子(大竹さん)から一枚のハガキを託される。定造は自らの死を予感し、啓太に生き残ったら、ハガキを読んだと妻に伝えるよう依頼する。そして終戦後、生き残ったのは啓太を含んだ6人だけだった。啓太は故郷に戻るが待っている者はおらず、そしてハガキを持って友子を訪ねる……という物語。作品同様、100人から戦争で生き残った6人のうちの1人として生きた新藤監督の実体験を基に描かれている。11年夏に全国で公開される。(毎日新聞デジタル)
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