「ノーカントリー」(07年)でオスカーを受賞し、今年は「トゥルー・グリット」が作品賞、監督賞などにノミネートされていたコーエン兄弟(ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン監督)の「トゥルー~」の前作「シリアスマン」が公開された。平凡な中年のおじさんに次々と災難が襲いかかる。人生の真実をブラックユーモアたっぷりに描き出した。「監督主義プロジェクト」で1月にアン・リー監督の「ウッドストックがやってくる!」で始まった特集上映の第2弾。
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1967年。ラリーはアメリカ中西部郊外に住む大学教授で、平凡なマイホームパパのユダヤ人だ。今の心配は13歳の息子の成人式を無事に終えることと、自分の終身雇用についてだ。だが、ラリーの家では小さな問題がちょっとずつ起きていた。兄のアーサーは無職で居候。息子ダニーは乱暴な同級生におびえている。隣人は勝手に芝生を刈ってしまう……。そんなおり、大きな災難が降りかかる。長年連れ添った妻が離婚話を切り出したのだ。さらに成績に不満を持った学生の父親から抗議されてしまう。ラリーは地元のユダヤ人コミュニティーの指導者であるラビに相談に行くのだが……。
ユダヤの寓話(ぐうわ)を映像にした少々不気味な冒頭。そこから一転、アメリカのホームドラマに出てくるような広い庭つきの大きな家。青空の平和な風景が広がる。ところが、まったく平和な話ではなかった。にっちもさっちもいかない状況にある人を描くことの多いコーエン兄弟だが、今回の餌食は黒縁めがねの善良そうなおじさんだ。なんだかちょっぴりかわいそう? だが、主人公を徹底的に突き放した描き方で、人生は良いことよりも悪いことの方が多いという真実が見えてくる。「身に降りかかる出来事をあるがままに受け入れよ」という冒頭の言葉を、どれだけ許容したらいいのだろうか、と思うぐらい、最後まで何かが起きる。「悩みは歯痛のようなものだ。答えなんてない」というラビのせりふに納得。不条理に打開策なしとおかしさを突きつけられて、逆になんだか生きるのが楽になる。26日からヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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