ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
話題の小説の魅力を担当編集者が語る「ブック質問状」。今回はお嬢様刑事と毒舌執事のユーモアミステリーで、11年の「本屋大賞」も受賞した「謎解きはディナーのあとで」(東川篤哉著)です。小学館出版局の矢沢寛さんに作品の魅力を聞きました。
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−−この作品の魅力は?
大富豪のお嬢様でありながら、正体を隠して捜査にあたる新米刑事の麗子と、彼女に仕える執事兼運転手の影山が、六つの事件の真相に迫ります。
事件の内容を話す麗子に向かって、「失礼ながらお嬢様の目は節穴でございますか」などの暴言を吐きながら、鮮やかに謎を解き明かしていく影山の名推理。麗子の上司、風祭警部も含め、キャラの立ちまくった主人公たちと、ユーモアあふれる会話の面白さ。東川さんがこれまで発表された小説は長編なのに対し、この作品は連作短編集になっていますので、ミステリーを読み慣れていない人たちでも、読みやすいのだと思います。また影山はいわゆる「安楽椅子探偵」で、話のほとんどを現場に行かずに、麗子が事件のあらましを話して会話を進めながら犯人に迫っていくという構成なので、読者が謎解きに参加しやすく、楽しめるのではないでしょうか。
−−作品が生まれたきっかけは?
女性の初代担当者は、「館島」(東京創元社)を読んで東川さんに会いに行ったといいます。女性が主な読者である小説誌「きらら」に掲載する作品をと言われ、東川さんは、これまで以上に女性読者を意識され、またミステリーを読み慣れていない人へ向けた作品を考えました。そして、東川さんはテレビで見た執事喫茶のニュースを思い出し、執事が安楽椅子探偵、お嬢様が新米刑事という設定でいくことになりました。
タイトルは、東川さんから70(!)ものタイトル案を出していただいた中から決めたそうです。細かく言うと、雑誌掲載時は「宝生麗子の謎解きはディナーのあとで」でしたが、単行本にする際に、「宝生麗子の」を外しました。
−−東川さんはどんな方でしょうか?
一言で言うと、「ぶれないひと」でしょうか。担当になってからまだ3年弱ですが、お会いしたころとこの作品が本屋大賞を受賞されてからで、少しも変わっていらっしゃらないという印象を受けます。最近の「生活は何か変わりましたか」などの質問でも、「そうですね、一番変わったのはこういった取材が増えたことですかね」と おっしゃっていました。
作品にはユーモアがいっぱいですが、普段は考えながらぽつぽつ話すという感じで、冗談を言って人を笑わせるというようなことはありません。先日200人くらいの聴衆を前にして、ライターの方と2人で話をするというイベントがありましたが、そこでの話をうかがっていて、執事の影山が推理のときに見せるような、本格ミステリー作家の論理的な頭脳を垣間見た気がしました。
−−この作品にかかわって興奮することや大変だったことはありましたか。
「謎解きはディナーのあとで」では、いつも予想を上回るペースで売れ続けていることに感謝もし、興奮もしています。
刊行する前にプルーフ本を作成し、書店の担当者の方にお送りしたところ、注文書に書いてある感想がとても好意的で、しかも通常の小社の単行本のときよりもとても多いことに、販売と宣伝の担当者ともども手応えを感じました。それで初版部数が、東川さんの近年の単行本よりも多い7000部になりました。しかも、発売の3日目で重版が決まったのです。そのときは外出していたため、携帯電話に編集長から連絡が入りましたが、うれしかったですね。
大変だったことはあまりないです。東川さんは携帯電話をお持ちではありませんが、ご不在の時はファクスがありますし、時間に正確な方ですので、待ち合わせなどでも困ったことは一度もありません。
−−今後の展開についてお願いします。
今年の「きらら」1月号から続編を連載中です。扉の絵は、カバーイラストを描いてくださった中村祐介さんです。おそらく年内には、第2弾が刊行される予定です。
また、コミック化が小社の「プチコミック」で始まりました。5月号では第1話が、7月号(6月8日発売)では第2話が一挙掲載されています。作画は、川瀬あやさんです。
映像化に関しては実現に向けて話が進んでおりまして、まだ正式な発表はできないのですが、ゆくゆくはお知らせできるのではと思っています。
小学館出版局 文庫・文芸 矢沢寛
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