桜井浩子:“特撮の神”円谷英二に意見? 「ウルトラQ」の撮影を振り返る WOWOWで一挙放送

「ウルトラQ」の思い出を語る桜井浩子さん
1 / 1
「ウルトラQ」の思い出を語る桜井浩子さん

 特撮ヒーロー番組「ウルトラマン」シリーズの原点となった空想特撮シリーズ第1弾「ウルトラQ」全28話のハイビジョンリマスター版(モノクロ)を、WOWOWは世界初公開で27日から一挙放送する。前日の26日には第1話と第2話を先行無料放送する。放送開始に先駆け、同作品のヒロイン・江戸川由利子役を演じた桜井浩子さんに話を聞いた。現在は「ウルトラマン」シリーズを制作する円谷プロダクションでコーディネーターを務める桜井さんは、自身が演じたキャラクターの由利子や怪獣のフィギュアを懐かしそうにながめながら、当時の様子を語った。(毎日新聞デジタル)

あなたにオススメ

 「ウルトラQ」は1966年、映画「ゴジラ」(54年)の特撮監督として知られる円谷英二さんの企画で、米ドラマ「トワイライトゾーン」などをヒントに作られた1話完結形のSFドラマ。青年パイロット万城目淳(佐原健二さん)とその助手の戸川一平(西條康彦さん)、そして毎日新報の女性記者兼カメラマンの江戸川由利子(桜井さん)がさまざまな怪事件に遭遇し、時にユーモラスに、時にシリアスに解決していくという物語で、ウルトラシリーズでおなじみのカネゴンやピグモンのモデルとなったガラモンなどの人気怪獣も登場。最高視聴率36.4%、平均視聴率32.4%を記録し、日本に怪獣ブームを巻き起こした。

 当時の人気ぶりについて、桜井さんは全く実感がなかったといい、「撮影中は放送がまだだったので、現場の熱気や若いエネルギーには共鳴したけれど大変だった」と撮影を振り返った。当時の撮影は、特撮部分と俳優の演技する部分の映像を別々に撮り、合体させる作業が難しかったといい、桜井さんは「例えば、怪獣の手の角度とキャラクターの目線が合わないなどで、撮り直しがものすごく多い。俳優はもう次の撮影に進んでいるのに撮り直しのために何度も前の現場に戻るんです。多かった時は7、8回くらい」と当時の苦労を話した。

 あまりの撮り直しの多さに、桜井さんは、当時“特撮の神”と言われた円谷さんに直接理由を確認したという。「(円谷)英二さんがカリスマだからスタッフが誰も理由を聞きに行けないんですよ。だから私が『何が気に入らないの?』と聞きに行きました」と当時の武勇伝を披露。「そのときは『山の中から怪獣が出てくる手前に私たちが逃げる場面を作りたいのに逃げる角度が違う』と言われました。スタッフに伝えたら『なるほど~』って(笑い)。何(の部分)がリテークか分かっていない人もいた。特撮と本編の合体が一番肝で、英二さんの頭の中をのぞけないので、それからは言われた通りにやるようになりました。今でも聞いておいてよかったと思います」と裏話を明かした。

 主役の佐原さんについて、桜井さんは「当時はテレビより映画の方が優勢。その中で佐原さんが主役を張って、円谷プロダクションの第1回作品を、『これを成功させないと円谷先生の顔がつぶれる』と番組をしょって立ってました」と頼もしかった当時の印象を語り、「佐原さんは東宝の大スターではなく制作者の一人のように(現場で)やっていましたので、いろいろ勉強になりました」と語った。西條さんについては「職人です。脇役ですけれどいろんな役に出ているプロの俳優さんだと思いますね」と尊敬を込めた。

 今回のWOWOWでの一挙放送に、桜井さんは「うれしいですね。『ウルトラQ』が大好きなファンもいるけれど、そうじゃないターゲットに白黒の番組をぶつけてみて、今の感想を聞いてみたいです」と反響に期待を寄せ、「待ち望んでいたファンの人たちには、きれいになったハイビジョンを楽しんでほしい。初めて見る人には新しい作品になると思うので、楽しんでもらえたらすごくいいなと思いますね」とアピールした。

<プロフィル>

 1961年に東宝撮影所に入社。「オール東宝ニュー・タレント」1期生となり、数々の東宝作品に参加した後、「ウルトラQ」のヒロインで女性新聞記者兼カメラマンの江戸川由利子役に選ばれる。続く「ウルトラマン」でも、科学特捜隊のフジアキコ隊員を演じ、当時の子どもたちのあこがれの対象となった。09年には「日本映画批評家大賞 ゴールデングローリー賞」を受賞している。

テレビ 最新記事