今年のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールに輝いた「ツリー・オブ・ライフ」が、12日に公開された。ブラッド・ピットさん、ショーン・ペンさんという2大スターの共演でも話題となっている。監督は、寡作で知られるテレンス・マリックさん。73年のデビュー作「地獄の逃避行」(劇場未公開)から数えて、今作が5作目だ。
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1950年代の米テキサスで、厳格な父親(ピットさん)と優しい母親(ジェシカ・チャステインさん)のもとで育った3兄弟。そのうちの長男ジャック(ペンさん)が成長し、自らの記憶を手繰りながら、父の思いに向き合おうとするヒューマンドラマだ。
近年の作品、「シン・レッド・ライン」(98年)や「ニュー・ワールド」(05年)がそうであったように、いやそれ以上に今作は“言葉”が少ない。その一方で、宇宙の始まりとされるビッグバンらしき映像や火山の噴火、噴き上げる泉といった自然の驚異と生命の神秘を見せ付ける映像が次々と映し出される。ひと言でいうなら“浸る映画”。ストーリーを求めては失敗する。観念的であり宗教的であり、マリック監督がハーバード大学で哲学を学んだことの片鱗(へんりん)がうかがえる。かといって、つまらないわけでは決してない。映し出され、降ってくる映像と音に自らを委ねれば、必ずそこから、家族、きずな、命、父、母、断絶と和解といったテーマを見いだせるはずだ。
厳格な父をペンさんが、成長したジャックをピットさんが演じるほうがしっくりきそうだが、それをあえて逆にしたところに今作の面白さでもある。もちろん、2人が素晴らしい演技を見せていることはいうまでもない。12日から丸の内ルーブル(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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