劇場版アニメ「空の境界」シリーズ(07~10年)の全7章と終章、特別編「空の境界 Remix −Gate of seventh heaven−」の合わせて9作品がWOWOWで15~19日に放送される。「空の境界」は、奈須きのこさんの同名小説が原作で、2年間の昏睡(こんすい)状態から目覚めた少女、両儀式(りょうぎ・しき)が、あらゆるものの死を見ることができる「直死の魔眼」を手に入れ、魔術師や異能力者にまつわる怪事件に立ち向かう姿を描いた作品。07年から公開され、単館公開のアニメとしては異例のヒットを記録した。放送を前に、同作を手がけたアニプレックスの岩上敦宏プロデューサーに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)
ウナギノボリ
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−−「空の境界」は大きなムーブメントを生んだ作品です。ヒットの理由はどこにあったと思いますか?
ファンの皆さんはご存じかと思いますが、奈須きのこさんが同人小説として最初に「空の境界」を発表したとき、それを手にしたのはたった数人でした。それが、奈須さんの作ったゲーム「月姫」のヒットを経て、講談社から出版されることになり、ベストセラーになった。原作そのものが、こういうストーリーの作品ですから、アニメ化といっても、「メジャー化しましょう。大々的に全国公開しましょう」という展開はまったく考えていませんでした。むしろ最初に原作小説を読んだ数人の方に代表されるコアな層にしっかり届くようなアニメにしようと考えました。そういう姿勢が原作のファンのみなさんに届いたことが、結果として広がりを生むことにつながったのだと思います。
−−全7章を1章ずつアニメ化し、公開していくというスタイルもユニークですね。
映画化というと長大な原作でも2時間前後にまとめてしまうことが一般的です。でも「空の境界」は、それができない作品なんですよ。各章ごとに独立したストーリーを持っているし、時系列もバラバラ。これは、各章ごとにアニメ化していった方がいいだろうと。ですから、奇をてらったことをやってやろうという気持ちはなく、これが「空の境界」の映像化としてはベストの形だという気持ちでした。当初は各章40分程度の上映時間でいけるんじゃないかとも思っていましたが、実際制作してみると基本60分ぐらいで100分を超える作品も2本ある。今考えると当初の見込みはとても甘かったですね、プロデューサー失格です。だから、アニメ制作をした制作会社ユーフォーテーブルさんは、本当に頑張ってくれたと思います。劇場版「空の境界」は第1章「俯瞰風景」公開から第7章「殺人考察(後)」の公開までが、およそ1年8カ月。ユーフォーテーブルさんの頑張りがなければ、あのクオリティーで、このペースで公開することはできませんでした。
−−公開して大ヒットとなったときには手応えを感じたのではないですか?
単館公開のレイトショーという変則的な上映でしたが、それでもお客様が大勢入ってくださいました。うれしかったですね。そして、なにより劇場の中に、独特の一体感があるのが、よかったです。
−−今回、WOWOWで一挙放送されますが、見どころについて教えてください。
HDかつ5.1チャンネルでTV放送されるのは今回が初めてですので、まずクオリティーの高い映像と音響を体感していただきたいです。それから、一挙放送ということなので、続けて見ることで「こことここがつながっているんだ」とか「この描写にはこういう意味があったんだ」という発見がいろいろあると思います。初見の方だけではなく、劇場でご覧になった方も改めて見るとまた新鮮な気持ちで見られるんじゃないでしょうか。「ツイン・ピークス」など、ちょっとカルトな雰囲気のある海外ドラマに通じるところもありますから、そんなつもりで見ていただければうれしいですね。
−−お薦めのシーンを教えてください。
そういう質問はよく聞かれるんですけれど、全7章あるので「7人の子供のうちどれが好きですか?」と聞かれているようで、とても答えにくいんですよね……。例えば、第1章「俯瞰風景」のビルの上でのアクションシーンはアニメ「空の境界」を象徴するシーンになっていると思います。第3章「痛覚残留」は、ジェットコースタームービーとして一気に見られますし、第5章「矛盾螺旋」は演出的に挑戦していて、トリッキーな語り口は全7章の中でも特に独特のものになっています。「空の境界」は、物語の軸が二つあります。一つは、主人公の両儀式と黒桐幹也(こくとう・みきや)の関係。もう一つは式と最大の敵である魔術師の荒耶宗蓮(あらや・そうれん)の戦い。各章ごとに完結したストーリーになっていますが、全体をこの二つの軸が貫いていますので、それぞれの章のストーリーを楽しみつつ、この二つの軸がどう表現され、キャラクターの関係がどう変化していくかに注目していただくと一層おもしろく見られます。
−−WOWOWの視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
今、お話ししたように全7章どれも非常に面白くできている作品です。さらに、梶浦由記さんの音楽も非常に素晴らしいです。全7章を通じて分かる劇場版「空の境界」の世界を堪能していただければと思います。
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