切手デザイナー:国内6人知られざる切手発行の舞台裏に迫る WOWOW

自ら手がけた特殊切手「星座シリーズ 第1集」を手にする切手デザイナーの星山理佳さん
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自ら手がけた特殊切手「星座シリーズ 第1集」を手にする切手デザイナーの星山理佳さん

 小さな紙片に広がる無限の世界−−“趣味の王様”といわれてきた切手。29日に放送されるWOWOWのノンフィクション番組「ノンフィクションW」では、そのデザインを手がける切手デザイナーという職業に焦点を当て、切手ができるまでの知られざるドラマを描く。「切手が発行されるまでに実はいろんなドラマもあるっていうことをちょっと知っていただいて、想像していただけたらなと思いますね。いまは手紙離れと言われていますけど、切手や手紙の楽しさ、うれしさということを思い出していただいて、郵便局に足を運んでくださる機会が増えたら」と語る切手デザイナーの星山理佳さんに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 日本国内では毎年約40種類5億枚が発行されている切手。かつては「技芸官」と呼ばれた公務員、民営化後の現在では郵便事業会社にいる6人の切手デザイナーが手がけている。今年7月に10年ぶりに日本で開催された切手のワールドカップ「国際切手展」までを追いながら、切手デザインにかけるデザイナーたちの高度な技術と情熱に迫る。

 1枚の切手が出来上がるまでは「おおよそ発行から6カ月が目安。早いと1年弱、8カ月前くらいから取り掛かるが、遅くても6カ月前には関わり始めます。発行の約1カ月前には各郵便局に納めなければならない」といい、スケジュールはタイトだ。記念切手であれば、各省庁の推薦リストを基に別の部署が記念事項を決定するが、星山さんらが自ら省庁との打ち合わせを行い、題材やデザインを決定していく。デザインに使用する題材や、デザインのアイデアとなるものを徹底的に調べ、関係する団体や専門家を訪ねたり、自ら写真を撮ったりするほか、切手のイラストから描くこともあれば、プロデューサーとして外部のイラストレーターにディレクションすることもある。デスク上でのいわゆる“デザイン”作業にとどまらない。

 「記念事項が決定するのも約1年前ですし、十分な調査期間が取れるとは言い切れないので、もっともっと調べたいとか、もっともっと知りたいなということはよくあります。何か気になることがあれば、それからさかのぼって、何かとにかくデザインに集約できるアイデアを探して、多方面に当たっていきます」といい、今年7月に発行された特殊切手「星座シリーズ 第1集」では、国立天文台にまで足を運ぶなど徹底している。それでも、鉄道や飛行機など熱心なファンが多いジャンルを扱う場合は、慎重を期して、専門家などに詳細な確認をお願いすることも。星山さんは「知ってる方は知っている。私たちなんか以上によっぽど詳しいので、付け焼刃でもがんばって調べないわけには行かない」と笑顔で語る。

 切手をデザインする際に心がけていることを聞くと、「難しい題材というのも結構あるんですが、それをうまく象徴させること。無関係であってはならないですし、うまく引き出していくこと、見た方が興味を持って、何でだろうと思って調べたら、『ああ、そうか』とわかるようなものっていうのは、私の中では気を使うようにしています」と話し、「小ささというのはひとつポイントですね。大きく扱ったときに美しいものでも、小さくするとわかりづらいものってあるんですよね。そういったところは意識して考えるようにはしています」と説明する。

 切手デザインの魅力について、「(切手は)長い歴史があり、昔からすばらしい一流の人たちが題材となっているので、重みもありますが、責任をひとつ負っているという自負はありますよね」とはにかむ星山さん。「切手デザイン」を初めて意識したのは、今年3月で定年退職した森田基治さんの作品が初めてだったといい、「本当にやりたいのは動物の切手なんです。森田という人間が写実的に動物を描くことがすぐれていたデザイナーで、初めて私が意識したのは森田の作品だったんですね。『なんてすごいんだろう。こんな緻密(ちみつ)に描いて』って。それにあこがれていたので、いまだにそれを追いかけていたところはあるんですよ。精密に美しく、確実なものを描けるようになりたいなっていう思いはありますね」と明かし、「森田さんに追いつくように、何でもこなせる、ひとつの表現にとらわれない、自由な発想で、いつも新しい発想ができる人間でいたい」と夢を語っていた。

 日本郵政では現在、ハートや青い小鳥がデザインされた特殊切手「東日本大震災寄附金付」を、80円切手に寄付金20円を上乗せした100円で26日まで発売中。デザインを担当した玉木明さんは「震災直後で時間もなかった。普段は見栄えを良くとか、自分を表現しようと考えるが、今回は違った。押し付けがましくなく、ただただ陰りのないもの。暖かくやさしいものを、と思って作った」と思いを語っている。

 ノンフィクションW「文化を切り取る切手デザイナー ~日本が誇る小さな芸術~」は、WOWOWで29日午後10時から放送予定。

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