カナダ・モントリオールで8月に開催された「第35回モントリオール世界映画祭」で、審査員特別グランプリを受賞した日本映画「わが母の記」(原田眞人監督)の受賞報告会見が1日、大江能楽堂(京都市中京区)で開かれ、原田監督と主演の役所広司さんが出席した。2人は京都で同作と連動したテレビドラマ「初秋」を撮影中で、現場に届いたばかりのトロフィーを掲げて受賞の喜びを語った。
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原田監督は「こちらで撮影に入っていたところ、映画祭に参加していた息子の遊人(同作で編集を担当)からメールが入りまして、『審査員特別賞ゲット』と書いてあるのですが、ピンとこなかったんです。そうしたら電話が入ったんです。樹木(希林)さんからで『喜びなさいよ! 大きい賞ですよ。(紹介されたのが)最後から2番目ですよ』と。一番気になっていたのが観客の反応だったのですが、素晴らしかったという話を聞いた時点で、涙が出てきました」と受賞の喜びを語った。役所さんも「希林さんと電話でお話ししたんです。(いつもは)クールな方なんですけれども、このときかなりテンションが高くて、希林さんの声から現地の興奮が伝わってくるような感じがしました」と喜びをかみしめた。
評価されたポイントを、原田監督は「審査委員長のビセンテ・アランダ(スペインの巨匠監督)が85歳だった、ということでしょうかね(笑い)。井上靖作品は海外でも人気が高く、現地の会見でも原作についての質問があったとのことです」と原作の人気の高さを挙げ、役所さんは「世界中どこの国に行っても、母親に対する思いというのは、きっと同じだろうと思います。言葉は通じなくても母親を思う気持ちと、母親と心が通じ合う喜びというのは、きっと世界的に共感していただけるところだと思っていました」と世界共通の「母と子のきずな」というテーマに思いをはせていた。
映画について役所さんは「この作品は心のケアになるような映画だと思います。映画を作っている人間として、この映画を通して東日本大震災に遭われた方にも元気を届けられたら。そして、これからもそんな思いを意識して(作品を)作っていきたいと思います」と話した。原田監督は「井上靖先生とお母様の関係が素晴らしいと思いました。憎んでいたけど、一方で愛を持っていた。その憎しみと愛の深さがこの作品を生み出した。素晴らしい表現者・芸術家は、母親が作り出している。母親との関係がすべての創造の根源だと思います。母の力、母の魅力、その源に触れたかった、それが今回の映画です。考えてみると僕自身も映画にひかれはじめたのは母親との関係からでした。観客の皆さんもこの映画からご自身のご家族、母親、その子供たちとの関係を考えてもらえたらと思います」とメッセージを送った。
「わが母の記」は井上靖の自伝的小説を、役所さん、樹木さん、宮崎あおいさんら豪華キャストで描く。昭和39(1964)年。小説家の伊上洪作は、父が亡くなったことから、実母・八重の面倒をみることになる。幼少期、母親とともに暮らしてこなかった伊上は、妻と3人の娘、妹たち“家族”に支えられ、自身の幼いころの記憶と、八重の思いに向き合うことになる。八重は、次第に薄れてゆく記憶の中で、“息子への愛”を必死に確かめようとし、息子は、そんな母を理解し、受け入れようとする……という物語。12年に公開予定。(毎日新聞デジタル)
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