注目映画紹介:「ツレがうつになりまして。」 深刻な内容を深刻ぶらず軽やかに描いた

「ツレがうつになりまして。」の一場面 (C)2011「ツレがうつになりまして。」製作委員会
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「ツレがうつになりまして。」の一場面 (C)2011「ツレがうつになりまして。」製作委員会

 細川貂々(ほそかわ・てんてん)さんが自身の体験をつづったベストセラーコミックを、宮崎あおいさんと堺雅人さん共演で映画化した「ツレがうつになりまして。」が公開中だ。宮崎さんと堺さんが夫婦役を演じるのは、08年のNHK大河ドラマ「篤姫」に続いて2度目。メガホンをとったのは「半落ち」(04年)や「夕凪の街 桜の国」(07年)、さらに今年は「日輪の遺産」が公開された佐々部清監督。監督と堺さんの顔合わせもまた、「日輪の遺産」以来2度目となる。

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 映画は、堺さん演じるうつになったツレ(夫・高崎幹男)と、彼を支え続けた宮崎さん演じるハルさん(妻・晴子)がお互いに変化を受け入れて成長し、夫婦の絆を確固たるものにしていくまでを描いた。佐々部監督はもともと人間の内面を描くことにたけているが、今作でもその手腕を遺憾なく発揮している。うつ病を扱い、重くなりがちな物語も、宮崎さんと堺さんというさわやかな顔合わせによって、沈み込まずに心地よく見ることができる。加えて、セットとはいえ純和風一戸建ての高崎家はステキだし、そこで2人と“同居”するイグアナの「イグ」も、そのまったりとした存在感で見る者の心を和ませてくれる。

 おそらく、本当のうつ病はもっと深刻で過酷で、患者本人はもとより、それを支える家族は大変な思いをしているはずだ。だがこれは、エンターテインメント作品であってドキュメンタリーではない。後半のあるシーンでは、アニメーションを実写に融合させることで、ファンタジーの要素を持たせてあり、さらにちょっとしたサプライズも用意されている。深刻な内容を深刻ぶらず軽やかに描いてみせたところに、今作の良さがある。丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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