先日、お世話になった映像系コンテンツ会社の社長と映像ビジネス市場についてお話しする機会がありました。名前を出すのは差し控えますが、日本の映像系コンテンツ商社の先駆者ともいえるべき方です。その方がいうには、このところの映像市場は4、5年前よりも状況はよくなっているそうです。その背景にはいくつか要因があって、小売りやレンタルをビジネスとしていた大手が自社流通を始める兆しがあったり、大手のコンテンツ系会社が自社のリスクでコンテンツをプリバイ(出来上がる前に作品を買うこと)をして、その後自分たちで権利販売を行うことが主流になってきたからだそうです。 加えて、中小の映像会社がやってきたオリジナル企画の映像や、DVD販売を前提とした邦画作品がコケにコケたので、「だったらすこし安くなってきた洋画を買った方が効率的にいい」という判断もあり、ゆえにフランスのカンヌで開催されたカンヌ映画祭も日本人のバイヤーが多く戻ってきたそうです。
ウナギノボリ
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その社長の会社は、日本のコンテンツ(ゲーム、マンガなど)をベースにした企画を海外の映画会社にセールスを行い、それらを組成することをメーンにした組織で、社長の個人的なネットワークと豊富なナレッジ(知識)で勝負している会社です。 ところが、似たビジネスの会社が徐々に増えてきました。ここでみなさんも知っていた方がいい二つの会社に触れたいと思います。一つは博報堂DYホールディングスの子会社や、セガが出資した「STORIES(ストーリーズ) LLC」(東京都港区、資本金3510万円)で、こちらは「日本のストーリー、クリエィティブを世界に」をキャッチフレーズに、日本のコンテンツを海外にセールスして、それをパッケージしていくことを業務の核にしています。 そしてもう一つは、資本金1520億1100万円を誇る官民出資の会社「産業革新機構」(東京都千代田区)が60億円の資本を投じる「オールニッポン・エンタテインメントワークス」(東京都港区)です。日本のマンガや小説などの映像化権を買い取り、それらを米国の映画会社と共同で映画製作を推進するのが狙いです。 ただ、このように国など巨大な資本が目を付けて動きはじめたビジネスは、ピークを過ぎて斜陽の業界……という見方もあるでしょう。さらに単なるお金で済まない人的なネットワークやナレッジがモノをいうのがコンテンツの世界の常識でもあります。キャッシュのリッチな企業が、一体何を見せてくれるのか、それとも、一時のにぎやかしで、何もなく終わるのか。コンテンツビジネスの“うねり”に注目していきたいと思います。
くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。
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