黒川文雄のサブカル黙示録:フェイスブックの上場とソーシャルの未来

 日本で「コンプリートガチャ」の騒動が起こっている最中、米国内ではフェイスブックがナスダックへの新規株式公開(IPO)の準備を進めていた。最近、話題性のあるIPOが少なかったこともあり、市場の関心を集めており、これによって創業者のマーク・ザッカーバーグ氏は、時価総額にして約190億ドル(約1兆5000億円)を得たといわれている。しかし、少々気になることもある。

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 ハーバード大の在学中、お遊び的に開発した情報サイトが世界を席巻するというサクセスストーリーは有名で、映画「ソーシャルネット・ワーク」(10年)でご存じの人も多いだろう。そこでも見られたように、学生時代の若さゆえ、よくいえば自由気ままな方針が、フェイスブックを作り上げてきた。

 しかし、株式公開で巨額の資金が手に入る対価として、会社の業績公開の義務も課せられ、重要な投資は株主にはかる必要がある。かつてアップルの共同経営者であったスティーブ・ウォズニアック氏は、あるインタビューでフェイスブックの株式公開前にこんな警告をした。「株式を公開することは会社の陣容や方針を明らかにし、株主からの厳しい要求に応える必要があり、自分たちの思ったような経営が成り立ちにくくなる」と。

 私は、フェイスブックが企業として、今以上にもうけることを考えざるを得ない環境に置かれるとみている。同社の課題はさらなるユーザーの利便性であると同時に、企業と株主の利益の追求になる。ユーザーの好みや動向を分析した上で、世界最大の「アクティブな名簿」を持った企業の強みを生かし収益活動をするのがIPO企業の宿命だ。だが株式公開直後に米国の証券会社がフェイスブックの収益予測を下方修正し、公開直後から株価が下落した。同社の収益性にやや疑問が残るという見方は根強い。

 しかし、賽(さい)は投げられた。果たして「世界最大の名簿会社」は、どのようなビジネスを展開するのか。ソーシャルネットワークの未来を考える上でも、フェイスブックの今後には注目だ。

 ◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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