「インファナル・アフェア」などで知られる香港の俳優のアンディ・ラウさんがプロデューサーに名を連ね、ノーギャラで出演した映画「桃(タオ)さんのしあわせ」(アン・ホイ監督)が13日から公開される。今作のプロデューサー、ロジャー・リーさんの実体験を基にした話で、60年間、彼とその家族に仕えてきた家政婦の桃(タオ)さんとリーさんとの関係が、緩やかにつづられていく。
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映画プロデューサーのロジャー(ラウさん)の家には、60年間住み込みで働く桃さんという家政婦がいた。仕事柄、世界中を飛び回るロジャーだが、家に帰るとそこにはいつも桃さんが料理を作って待っていてくれた。ところがあるときロジャーが帰宅すると、桃さんが倒れていて……。主人公・桃さんを演じるのは、10年ぶりの銀幕復帰となったディニー・イップさん。その味わい深い演技で11年に開催されたベネチア国際映画祭で主演女優賞に輝いている。
最初こそ、ラウさん演じるロジャーは、桃さんに愛情がないのではないかと思った。それほどそっけない態度をとっていた。久しぶりに家に帰っても会話はほとんどなく、桃さんが作った料理を黙々と食べるだけ。だが、徐々にそれは気の置けない相手だからこその行為だと分かってくる。そして、桃さんが倒れてからの彼の献身ぶりには目を見張る。しかしそれは、決してベタついたものではなく、絆のなんたるかを改めて私たちに教えてくれる。
この映画は老いとみとりについての話だ。地味だし、心浮き立つような内容ではないが、間違いなく心が豊かになる。涙は流れても、それは悲しみの涙ではなく、安らぎからくる涙だ。桃さん役のイップさんの名演もさることながら、ラウさんは、普段の二枚目ぶりとは異質の、まじめで愛情深く、でもちょっぴり不器用、そんなロジャーを好演している。13日からBunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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