07年をピークに国内市場規模が半減し、スマートフォン向けのソーシャルゲームが急伸するなど、テレビゲームの市場が急速な変化を見せている。その中で、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、家庭用ゲーム機の「プレイステーション(PS)3」、携帯ゲーム機の「PSP」と「PSVita」の三つのゲーム機でビジネスを展開している。SCEの制作部門「ワールドワイド・スタジオ」で、PSソフト戦略・開発の責任者「プレジデント」として指揮を執る吉田修平さんに話を聞いた。
ウナギノボリ
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−−PS3、PSP、PSVitaという三つのゲーム機のビジネス戦略の違いについて教えてください。
PS3は、家庭用の大画面テレビで遊ぶゲーム機という位置付けだ。発売から6年が経過し、ソフトの開発者がゲーム機の仕組みを熟知している最も旬のハードだと思っている。PSPは発売されて8年目の携帯ゲーム機で、(1万3800円への)値下げもあって三つのゲーム機では最も買いやすい。手軽さも魅力で、ゲームのエントリー機として若い人に注目してほしい。PSVitaは、5インチの有機EL、3G回線、本体機器の背面のタッチスクリーンなど考えうる技術を詰め込んでいる。これ以上ないインターフェースを実現した最高のポータブル機だ。
−−PS3登場から6年と過去のゲーム機に比べて、寿命が長くなっているが。
PS3を設計をした当初から、10年間は現役でやりたいと考えていた。ゲーム機の寿命が長くなるのは、スマートフォンのシステム・アップデートのように、ゲーム機のシステムを改良しているからだ。さらにいえば、ゲームソフトもアップデートをして、遊ばれ方が長くなっているし、ユーザーも慣れてきている。
−−今のゲーム機はCGもすごい。これ以上高性能のゲーム機は必要なのか。
昔はオーディオシステムや、ステレオにお金をかけるマニアがいた。そして誰にでも差が分かるほど圧倒的にいい音が楽しめた。ただ、CDが普及し、手軽に高品質の音楽が聞けると、高額機器と普通機の違いが限られた人にしか分からなくなった。
これは、CGの世界でも起こりうると思っている。実際にハリウッド映画のアクションシーンで、限られた人には、合成と実際の映像の違いは分かる。だが普通の人には分からない。
−−では、次世代ゲーム機は不要?
いや、そうではない。ゲーム開発者は、限られたハードウェアの性能を使いこなしている。だから見えないところはうまく抜き、見えるところはしっかりと作り込んでいる。「この手法でいい」と思う人はいると思う。ところが現在のゲームのCG描写技術レベルが、あるレベルを超えると、「何だこれは!」と驚くものが出てくる。
言えることは、作り手側は、ある段階でピーク(ゲーム機の限界)が来るのは分かっているということ。そのピークが来たときでないと、(次世代の)新ハードを導入する意味はない。それはいつかは訪れる。ただし「いつ」とは言えないということだ。
−−11年に発売されたPSVitaはソフト不足が叫ばれている。てこ入れ策は?
新しいタイトルを世に出し続けていくことしかない。13年春に発売される「ソウル・サクリファイス」は、PSVitaならではのタイトルなので期待してほしい。またバンダイナムコゲームスから13年に発売される「ゴッドイーター2」は、PSPとPSVitaの両方で発売されるが、PSVita版は画像の美しさが圧倒的で、一度見るとこれまでの内容に満足できなくなると思う。PSP版のユーザーとPSVita版のユーザーが遊べば、PSPのユーザーがPSVitaに乗り換えるだろう。
−−PSVitaは、PSPの上位機ということか。
そう理解してもらえれば良い。ある時期になれば、PSVitaが基準になると思っている。水を泳ぐアヒルが水面下で懸命に足を動かしているように、我々も(ソフトの開発に)頑張っているところだ。
−−スマートフォンのソーシャルゲームだが、CGが高品質化している。携帯ゲーム機の地位は脅かされないか?
(ゲーム画面だけでなく)インターフェース(操作端末)を含めて遊んだ感じがどう評価されるか……という話だ。その差は絶対的な自信を持っている。もちろんPSVitaで、全てのニーズがまかなえるとは思っていないが、スマホのゲームで得られない体験がPSVitaにはあると思っている。
よしだ・しゅうへい=64年生まれ。86年にソニー入社。93年にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)へ。96年に08年から現職。同社ソフト部門の戦略・開発の責任者として指揮を執る。
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