井筒和幸監督の最新作「黄金を抱いて翔べ」(11月3日公開)は、個性的な男6人が金塊強奪作戦を企てる痛快エンターテインメント作品だ。人生と命を懸けて「黄金」を勝ち取ろうとする男たちの話だが、このほど東京都内で開かれた完成披露試写会の席はほとんど女性の観客で埋め尽くされた。「男のために作ったのに、女の人ばっかり!」と井筒監督は驚いていた。
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井筒監督といえば「岸和田少年愚連隊」(96年)や「パッチギ!」(04年)などの代表作で知られ、やんちゃな映画でおなじみ。今作も男くさい映画に違いないのだが、監督がかねてこよなく愛していた原作小説(高村薫さんの同名デビュー作)を借りて、やんちゃさに男の虚無感と色気が加わった。
15日に都内で行われた完成披露試写会の舞台あいさつでは、主演の妻夫木聡さんは「ジャパンノワールができた」と力強く語り、共演の桐谷健太さんも「どっしりとしてめっちゃカッコいい映画」と男の映画であることをアピール。
写真撮影では妻夫木さん、桐谷さん、浅野忠信さん、溝端淳平さん、東方神起のチャンミンさん、西田敏行さんら出演者が階段状のレッドカーペットに登場し、男6人のオーラがバチバチと飛び交った。俳優をひと目見ようと集まった女性たちからは絶叫に近い声援が送られ、周囲の建物の窓からもその様子をのぞく人たちであふれたほど。
妻夫木さんは最近、「悪人」(10年)、「マイ・バック・ページ」(11年)、「愛と誠」(12年)などの主演作が目白押し。浅野さんは今やハリウッド映画でも活躍。桐谷さんは「ゲロッパ!」(03年)や「パッチギ!」など井筒作品の常連。溝端さんは「DIVE!!」から着々と映画出演を重ねている。チャンミンさんは映画初出演だが、自国の韓国では連続ドラマに主演している。西田さんは井筒作品では「ゲロッパ!」に主演、日本映画界の至宝と呼ばれる大ベテランだ。
そんな実力派たちが集まって演じるのは、個性的な面々だ。危ない仕事に手を染めてきた幸田(妻夫木さん)、強奪作戦立案者の北川(浅野さん)、システムエンジニアの野田(桐谷さん)、北川の弟の春樹(溝端さん)、爆破工作のプロのモモ(チャンミンさん)、エレベーター整備ができるジイちゃん(西田さん)。それぞれに表と裏の顔があり、黄金にかける思いだけで一致している。妻夫木さんが「6人の生きざまをまじまじと感じられる作品になった」と語るだけあって、スクリーンからは刹那(せつな)に生きる男たちの色気があふれている。
舞台あいさつでは、チャンミンさんの横顔に見とれていた西田さん。思わず「ほれぼれするねえ~」と感嘆の声をもらしていた。映画にはチャンミンさんのクローズアップがたくさん出てくる。
桐谷さんによれば「現場では監督の怒号が飛ばず、色気のある映画だったからか、演出がクールだった」という。井筒監督は「僕の力量では映画化は不可能だと思っていた。他の監督に先を越されるかも」とヒヤヒヤしていたという内心を明かしながら、「プロデューサーに感謝」と話していた。原作の複雑な人間関係やバックボーンを上手に整理し、原作のテイストはそのままで、豪華俳優たちの魅力がたっぷりの作品となった。11月3日から全国で公開。 (上村恭子/毎日新聞デジタル)
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