テレビ質問状:ノンフィクションW「キム・ギドクが愛したアリラン」 3大映画祭を制した男の素顔

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 WOWOWは、毎週金曜午後10時に「ノンフィクションW」枠を設け、オリジナルのドキュメンタリー番組を放送中だ。この枠では、見る人を新しい世界へと誘うフルハイビジョンの“ノンフィクションエンターテインメント”番組をWOWOWプライムで毎週、テーマを変えて放送している。5月17日に放送される「キム・ギドクが愛したアリラン 韓国第二の国歌と言われる“究極のブルース”」を担当したWOWOWの制作部の内野敦史プロデューサーに番組の魅力を聞いた。

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 −−番組の概要と魅力とは?

 今、世界が最も注目する、アジアを代表する映画監督キム・ギドクさんへのロングインタビューと一部私生活に密着した、貴重な映像によるドキュメンタリーです。特に番組はキム監督が愛してやまないという伝統民謡「アリラン」に注目し、なぜ彼がこの歌にこだわるのか、その真相に迫ります。本企画最大の魅力は随所に出てくるキム監督の素顔です。優しい表情でインタビューに答える彼の表情と、彼のアリランの歌声が深く印象に残ります。挑発的な演出を武器とする彼のイメージとはまったく違うことに驚きすら感じるかもしれません。

 −−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 実は元々、発案いただいた制作会社のプロデューサーとはアリランの歌、それ自体をテーマに“歌のチカラ”を深く掘り下げようとしていたのです。ところが2011年のカンヌ国際映画祭でキム監督の映画「アリラン」が<ある視点>部門の最優秀作品賞を受賞、続いて昨年のベネチア国際映画祭で「嘆きのピエタ」が金獅子賞を受賞。さらに、これらの授賞式でキム監督が、スピーチどころかアリランを観客の前で朗々と歌い上げるという行為を知ったとき、我々制作スタッフはなぜキム監督がそれほどまでアリランを愛しているのか、彼を魅了するアリランの魅力はいったいどんなものなのかを探ろう、ということになったのです。

 −−制作中、一番に心掛けたことは?

 映画界では“鬼才”といわれ、斬新で挑発的で、時には不自然な演出を武器とするキム・ギドク監督ですが、アリランというフィルターを通すことで、どれだけキム監督の脳内心理に入り込むことができるのか? 制作スタッフとは限られたインタビュー時間の前に何度も何度も話し合いました。しかし実際にお会いしたときのキム監督の印象は、体全体が優しさのオーラに包まれていて、アリランの歌が持つ人間の真理を、言葉をつむぐように丁寧に語っていただくことができました。我々はこのインタビューのときに得た印象をいかにダイレクトに視聴者の皆さんにお伝えできるか、そこに注力しました。

 −−番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 世界3大映画祭を制した男(といっては大変おこがましいですが)と、ほんの少しでも人生の貴重な時間を共有させていただいたことが、個人的には大変うれしかったです。映画を作ること、それ自体が人生であると言い切る“映画人”としての彼に、改めてファンになりました。制作期間中一番大変だったことは、やはりキム監督が11年の映画「アリラン」から昨年の「嘆きのピエタ」の制作期間と重なっていたこともあり、なかなか取材タイミングを見つけられなかったことです。しかし、裏を返せば、むしろこの期間に普通でしたら完全にシャットアウトされてしまう取材を、我々制作スタッフの粘り強い交渉により、短い時間でもOKを出していただき、映像自体が大変希少価値の高いものにもなったのです。

 −−番組の見どころを教えてください。

 キム監督がスランプに陥り、カメラを回せなくなってしまった時期、いかにアリランの精神に救われたかを赤裸々に語っていただいているところです。番組のために何度もアリランの歌を歌っていただいているところも大変貴重な映像です。キム監督の映画制作に対する熱い思いが全編にみなぎっています。

 −−視聴者へ一言お願いします。

 キム・ギドク監督ファンの方にとっては、世界3大映画祭を制した映画人の挫折からの復活劇として楽しむことができます。また、一人の人間が思い悩み挫折しつつも、いかに“歌の精神”に救われ、再び人生を歩み始めることができるのか……。人間ドラマとしてファンでない方でもお楽しみいただけるドキュメンタリーです。ぜひご覧ください!

 WOWOW 制作部 プロデューサー 内野敦史

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