仏映画界の大女優、今年85歳になったジャンヌ・モローさんの主演作「クロワッサンで朝食を」(イルマル・ラーグ監督)が20日、公開される。モローさんが裕福で意固地なマダムを、シャネルの私服に身を包み演じている。毒舌を繰り出すおばあさんの中に、人生を終えようとしている者の孤独や嫉妬心が垣間見える。エストニアのラーグ監督の劇場用長編デビュー作。
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エストニアで母をみとって心身ともに疲れ果てたアンヌ(ライネ・マギさん)は、若いころの憧れの街パリに旅立った。元職場の老人ホームから仕事を頼まれたのだ。それは、パリに住むエストニア出身の老婦人フリーダ(モローさん)の世話係。16区の高級アパルトマンに住んでいるフリーダは、近くのカフェの経営者ステファン(パトリック・ピノーさん)の世話になりながら暮らしている。アンヌはおいしいクロワッサンも満足に買えず、気難しいフリーダに「家政婦はいらない」といわれる始末。同じ国出身の2人は反発し合いながら、次第に関係が変化していく……という展開。
これは“お一人様”女性必見の映画ではないだろうか。人生を再出発しようとしているアンヌと、人生を終えようとしているフリーダ。2人の女性のこれまでが、アンヌの目線から見たパリの風景、または高級だけれども温かみのないフリーダのアパルトマンの中に表れている。「こんな朝食はNG」と床にわざと紅茶をこぼすフリーダの毒気にアンヌは始めはタジタジになるが、さすが苦労を重ねてきただけあり、簡単にはヘコまない。2人は同じ国出身のパリの異邦人。フリーダがアンヌを受け入れることは、老いていく自分を受け入れることと同じなのかもしれない。近くのカフェの男性もからませて、どのように人生を選択していくのかを見せていく。朝焼けのパリの美しさが“希望”そのものとして体感できた。20日からシネスイッチ銀座(東京都中央区)ほかで公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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