朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第126回 村上春樹「カンガルー日和」

「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん
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「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第126回は村上春樹「カンガルー日和」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 いよいよ始まる夏休み。社会人に学生など、お休みの日程はまちまちかと思いますが、どう過ごされるか、すでに計画はお済みでしょうか? お祭りに、プールに、花火大会……カレンダーを見ながらお出かけの予定を立てるのって、とても楽しいですよね(*^^*)

 実は夏にお出かけするのは、私たち現在を生きる人ばかりではありません。忘れてはいけない日本古来の行事「お盆」は、故人の霊魂があの世とこの世を行き来する期間です。13日に迎え火をたいて魂をお迎えし、16日には送り火をたいて再びあの世へと送るのが一般的な風習。京都の「五山送り火」、奈良の「高円山大文字送り火」などは、毎年大がかりな送り火を行うことで有名ですよね。

 また、地域によっては「精霊馬(しょうりょううま)」と呼ばれるキュウリやナスで作った動物を用意することもあります。割り箸やマッチ棒などで足をつけた野菜の馬・牛は、ご先祖様の魂のために用意される乗り物だと言われています。お墓参りなどで見かけたことのある方も多いのではないでしょうか?

 一般的にナスは牛に、キュウリは馬に見立てられますが、これは「足の速い馬であの世から早く帰ってきてほしい」「ゆっくり歩く牛で少しでも長くこの世のいてほしい」という願いが込められているとか。 可愛い飾りに込められた気持ちは、古来、日本人が持つ優しさで満ちあふれているんですね。

 でも、一番幅広い層に共通して縁があるのは、なんと言っても「盆踊り」。そろいの浴衣で帯に団扇(うちわ)をさした衣装が一般的ですが、狐のお面をかぶったり、舞台で使うようなお化粧をしたりして踊る地方もあるそうですよ。私も朗読倶楽部のみんなと、近くの盆踊りにお出かけする予定です。

 ではここで朗読倶楽部のお話、運命を決めた5度目の大会出場・その3です。

 ついにやってきた、本選の日。そのステージは、半年前に初めて朗読劇を鑑賞して、私にはとてもまねできないと思ったあの場所……しかも今回は観客席での鑑賞ではありません。読み手として、舞台に立つのです。

 会場では先日お世話になったばかりの、小口のどかさんたち「文芸部朗読サークル」と再会、あいさつを交わしました。彼女も、無事地区予選を通過していたのです。交流戦では負けてしまいましたが、今回は、今回だけは負けることのできないライバルです。

 みかえさんの妹・ちなさんも応援に駆け付けてくれました。朗読倶楽部を敵視していた出会いのころと違い、ちなさんは終始にこにこ顔。後から知ったのですが、この時点でちなさんは私たちの学校の初等部への転校が決まっていたんだそうです。

 こうして……いよいよ本選が始まりました。私たちは、控室で「発表の時」を待ちます。この日のために練習してきた朗読劇、私たち朗読倶楽部が選んだ題材は、宮沢賢治さんの「ひのきとひなげし」。正直に言えば、まだまだ100点と言える仕上がりにはなっていないと思います。それでも、不安になったとき周りを見渡せば、そこには……先生、部長さん、みかえさん、みんなの顔。それだけで、心のざわめきはきれいに消えてしまいます。

 そしてやってきた、私たちの発表の番……朗読倶楽部、一世一代の晴れ舞台! その結末は……と、いうわけで、ついに次回は最終回。どうか最後まで、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 村上春樹「カンガルー日和」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、4月に発表された3年ぶりの長編「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」も大人気な村上春樹さんの短編集「カンガルー日和」です。

 おかしくも懐かしいエピソードを集めたこのお話は、1983年に発表されました。夏を舞台にしたお話が多いので、この時期の読書にもぴったりですよ。

 表題作「カンガルー日和」をはじめとして、収録されている18の作品の題名はそれぞれ個性派ぞろい。その一部をご紹介すると……。

 「タクシーに乗った吸血鬼」「あしか祭り」「駄目になった王国」「とんがり焼の盛衰」

 いかがですか? 題名を読んだだけで、どんなお話なのか気になってきませんか? カンガルーの赤ちゃんを見に行ったり、強烈な眠気と戦いながら知人の結婚式に出たり、突然家にあしかの営業がやってきたり……。どこにでもいるようで、どこにもいないキャラクターたちが織り成す日々にたっぷりとひたってみるのも、なかなかにお勧めですよ。

 けれど、この短編集の中身は、そんな明るい日差しが降り注ぐ世界のお話ばかりではありません。「図書館奇譚」では、図書館の地下に広がる闇が描かれます。

 「オスマン・トルコ帝国の収税政策」を探しに図書館へやって来た主人公「僕」は、案内された地下室で謎の老人にとらわれてしまいました。老人は、「僕」の求めに応じて探し出した3冊の本の内容を、1カ月で暗記することができたら出してやろうと言うのですが……。

 羊の毛皮をかぶった世話係の「羊男」から、老人の恐ろしい目的を知った「僕」は、地下室からの脱走を決意します。果たして「僕」は無事、図書館から脱出できるのでしょうか……?

 少しホラーなおとぎばなしでひんやりしてみるのも、夏の楽しみの一つですよね。ちなみに「僕」と冒険を共にする「羊男」は、「羊をめぐる冒険」「羊男のクリスマス」などの別作品でも活躍しているので、登場作品を読み比べてみてはいかがでしょうか?

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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