WOWOWは、毎週金曜午後10時に「ノンフィクションW」枠を設け、オリジナルのドキュメンタリー番組を放送中だ。この枠では、見る人を新しい世界へと誘うフルハイビジョンの“ノンフィクションエンターテインメント”番組をWOWOWプライムで毎週、テーマを変えて放送している。9月20日に放送される「ドミニカン・ドリーム！　WBC優勝の裏側にあった“メジャーリーガー工場”」を担当したLADACの森山智亘ディレクターに番組の魅力を聞いた。

あなたにオススメ

“あの頃”のジャンプ：実写ドラマ化も話題「ウイングマン」　1983年を振り返る

　−−番組の概要と魅力は？

　今年3月、ワールド・ベースボール・クラシック（WBC）で世界一となったドミニカ共和国。一方でこの小さな島国は、「メジャーリーガー工場」という異名も持っています。なぜなら、アメリカに年間400人近くもの野球選手を送り出していること、メジャーリーグの外国人選手の割合も圧倒的1位をドミニカが占めています。

　なぜドミニカから、多くのプロ野球選手が生まれるのか。番組ではその秘密を探るべく、まさに“メジャーリーグ工場”の生産・出荷が一貫して行われている小さな町、サンペドロ・デ・マコリスを取材しました。

　そこで出会った2人のドミニカ人少年の取材を通し、日本ではまだ広く知られていないドミニカの野球選手育成システムに迫ります。

　−−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は？

　今年のWBC優勝まで、ドミニカ共和国の存在は知られていながらも、大きくクローズアップされることがなかったと思います。今回の優勝を受けて改めて「野球大国」の裏側に興味を抱いたことがきっかけでした。なぜこの国は、米メジャーリーグにとって、海外最大の選手供給源となっていったのか。

　一方で、現在も多くのメジャーリーガーを生んでいながら、なぜドミニカ代表チームはこれまでWBCなど世界の舞台で結果を残すことができなかったのか。逆になぜ、今回は優勝ができたのか。それらの疑問が企画へとつながりました。

　−−制作中、一番に心掛けたことは？

　メジャーリーグを目指す少年たちが向き合う厳しい現実や、心情を細かく描くことです。実際に現地に取材に行き、取材対象の少年たちに話を聞く中で、ドミニカの若者にとってプロ野球は「夢」や「憧れ」であると同時に、「生きるための切実な手段」だということが分かってきました。

　彼らの夢を、単なるきれいごとでは終わらせないよう編集や表現について制作過程で考えました。

　また、日本とは大きく異なるドミニカならではの選手育成・発掘システムを分かりやすく伝えることも心がけていますので、番組を見ていただけたら、ドミニカの野球の強さの秘密が分かっていただけると思います。

　−−番組を作る上でうれしかったことは？　逆に大変だったエピソードは？

　密着取材をしていた2人のドミニカ人少年のうち、一人がこの夏、私たちの予想を超える破格の契約金でメジャー球団に入団する瞬間に立ち会えたことです。球団関係者も「球団史上初めて」という契約金、さらに活躍への大きな期待が掛けられている選手です。

　取材のゴールでドキュメンタリーならではの「先の見えない」展開を体験したことで、鳥肌が立つほど興奮しました。

　逆に、メジャー球団の契約シーズンということで、当事者である少年たちや家族、関係者が取材に対して相当ナイーブになっていたことは取材側の予想を超えるもう一つの出来事でした。約束していた取材ができなくなりそうになったり、ガードが予想以上に厳しいという現実に直面しました。

　現地に入ってからも交渉続きで、ディレクターとしてそれこそ毎日が勝負という状況でしたが、彼らのメジャーリーグに懸ける思いの強さを知ることにもつながりました。

　−−番組の見どころを教えてください。

　知られざる野球大国、ドミニカ共和国でどのようにして、メジャーリーガーが生まれていくのか。その驚くべきシステムに大きな夢を持つドミニカ人少年の情熱、そしてサクセスストーリーの密着取材を通して迫っていきます。

　−−視聴者へ一言お願いします。

　日本でも多くの少年が、プロ野球選手を目指していますが、決して豊かではない社会で生きるドミニカ共和国の人々にとってメジャーリーガーになることは、私たち日本人以上に大きな意味を持っていると感じました。

　視聴者の方が今後、メジャーリーグや日本のプロ野球で活躍するドミニカ人選手たちの姿を見たときに、この番組を通して新たな視点を重ねていただくことができたら、制作者として本望です。

　LADAC　ディレクター　森山智亘

　番組スタッフ：清末亀好プロデューサー（LADAC）、富樫佳織プロデューサー（WOWOW）