安土桃山時代に活躍した茶人・千利休の若き日の秘めた恋と美への情熱を、陰影のある美しい映像でつむいだ映画「利休にたずねよ」(田中光敏監督)が7日に公開された。原作は山本兼一さんの直木賞受賞小説。NHK大河ドラマ「天地人」の小松江里子さんが脚本を担当し、「化粧師 kewaishi」などの田中監督が手掛けた。歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが千利休の10~70代間際までを演じ分けている。海老蔵さんの亡父・市川團十郎さんとの父子共演やロケ地となった国宝級の寺や城も見どころだ。モントリオール世界映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞した。
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雨嵐の早朝。3千もの兵に取り囲まれた利休屋敷。豊臣秀吉(大森南朋さん)の命によって千利休(海老蔵さん)の切腹が執り行われようとしていた。死に直面した夫に対して利休の妻・宗恩(中谷美紀さん)は、「思い人がいたのでは」という思いをぶつける。かつて織田信長(伊勢谷友介さん)の茶頭として仕えていた利休は、信長の死後、天下統一を成し遂げた秀吉の庇護(ひご)の下、「天下一の宗匠」として名をはせた。しかしその名声は、やがて秀吉のねたみを買うことになる。秀吉が追う利休の急所、それは利休の美の原点となった秘められた思い出にあった……という展開。
利休が使ったとされる茶わんも登場し、スクリーンから本物の質感がにじみ出てくるようだ。そんな時代背景の中、利休と信長、秀吉との関係と、利休の原点に触れる恋愛を軸に進み、人間・利休に光を当てている。利休の魅力は“絶対的な美意識”だが、その美意識の原点を、利休の過去から掘り起こしていく。利休に海老蔵さんという配役が絶妙だ。恋に情熱を傾ける若かりし利休から、静かだが強い存在感のある晩年の姿まで、一人の人間の人生に宿るさまざまな面を、一挙手一投足の立ち居振る舞いで演じ分けている。秀吉演じる大森さんの演技も絶品。利休への尊敬と嫉妬が混ざった複雑な胸中が見え隠れし、笑い方一つにもさまざまな心情が垣間見え、その演技を楽しませてもらった。威光を示すために秀吉が催した大イベント「北野大茶会」のシーンは圧巻だ。三井寺、神護寺、上賀茂神社で約700人のエキストラを集めたという場面には製作サイドの底力を感じさせた。7日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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