宇宙空間に投げ出された宇宙飛行士の極限状況を描いたサスペンス映画「ゼロ・グラビティ」(アルフォンソ・キュアロン監督)が、13日に公開された。出演者はサンドラ・ブロックさんとジョージ・クルーニーさんの2人だけという異色の作品。一体どうやって撮影したのだろうと感心するほど臨場感ある宇宙の映像が、冒頭から目をくぎ付けにする。宇宙に行ってみたい人必見(しかし心変わりさせられる可能性はあるが…)の映画だ。
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ブロックさんが演じるのは、新人宇宙飛行士のライアン・ストーン。地上60万メートルで、故障した機材の修復に悪戦苦闘しているストーンのかたわらでは、ベテラン飛行士のマット・コワルスキー(クルーニーさん)が、新型ジェットパックの性能を試しながら宇宙遊泳を楽しんでいる。そこへヒューストンから作業中止命令が入る。人工衛星が破壊され、その破片がライアンたちの方に猛烈な勢いで迫ってきているというのだ。やがて到達した破片はライアンたちのシャトルを直撃。そしてライアンも宇宙空間に投げ出されてしまう……という展開。
無重力空間に投げ出された人間の孤独。宇宙の中で圧倒的な寂寥感(せきりょうかん)に襲われる。宇宙ステーションとの交信も途絶え、聞こえてくるのは自分の呼吸音だけ。しかも酸素量はどんどん減っていく……。ライアンの視覚でとらえられた映像によって、観客の目はいつしかライアンと同化。時間の経過が、息苦しさのあまりノロノロと遅く感じられる。
一体どうやって撮ったのだろうと目を見張るほど、リアリティーあふれる映像の数々。宇宙の神秘、人間のちっぽけさを思い知らされる。エド・ハリスさんほか数人が声の出演をしているが、姿を見せるのはブロックさんとクルーニーさんだけ。90分あまりという最近の映画にしては短めの上映時間だが、2人だけでそれをもたせられる力量、そして息子ホナスさんとともに脚本を書いたというキュアロン監督の技量、さらに最新のVFXでその映像を生み出したスタッフに感服する。13日から丸の内ルーブル(東京都千代田区)ほか全国で公開中。3D同時公開。ぜひ3Dでの観賞をおすすめする。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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