映画「ウォーキング with ダイナソー」が20日に公開された。今作は、映画「ディープ・ブルー」をはじめ多くの“ネーチャードキュメンタリー”を手掛けてきた英国「BBC EARTHフィルムズ」が、恐竜についての最新の発見を取り入れつつ、恐竜たちの世界を再現した実体験型の3Dアクションアドベンチャーだ。主人公のパキリノサウルスのパッチの声を、お笑いコンビ「とんねるず」の木梨憲武さんが好演している。2003年に公開された映画「ファインディング・ニモ」以来、10年ぶりの声優挑戦となった木梨さんに話を聞いた。(遠藤政樹/フリーライター)
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吹き替え版を見た印象を、木梨さんは「スタッフの方たちの大丈夫という顔を見て『よし大丈夫だ』という判断を自分ではしたつもりです。作品がすごいので、最初は僕の声が邪魔しないよううまくはまるようにやらななくてはと思っていたのですが、今のところ邪魔だとはいわれてないのでよかったです」と謙遜する。
木梨さん演じるパッチは可愛らしさを感じさせる独特なトーンで話す。声の方向性がどのように決まっていったかについては「リアクションを大きめになど、ちょっと作り込もうかと思ったときもありましたが、作り込んだときのスタッフの顔色がダメだと。そこで、このへんでいいんじゃないかなと普通にやったところ、それがやっぱり大丈夫で、正解でした」と木梨さん。続けて「正解はそこだとは思っていたのですが、タレントとして『結構、自分振り幅ありますよ』というのを見せたかったんでしょうね(笑い)。ただ、すべて邪魔なものでした」とジョークを交じえて自虐的に語る。
10年ぶりの声優挑戦ということで、アフレコの際の苦労などはあったかと聞くと、木梨さんは「10年前の『ニモ』も一人でしたが、今回もスタジオのマイクの前に映像と自分だけで、ほかの声優さんとか(人気子役の鈴木)福君も同時にはやりませんでしたガラスの向こうのサブに監督がいる状態で最初はやっていた」という。その後は監督の判断により「後半は監督と2人で(スタジオに)入って『こんな感じはどうでしょう?』『じゃあそういってみましょう』と。監督はこの作品で初めてお会いしたのですが、監督が僕をうまく誘導してくれてスムーズにいったと思います」と振り返った。
物語が進むにつれ子どもだったパッチが次第に成長を遂げていくが、心情の変化を「作り込んでスタジオに入らなくていいというシステムが徐々に分かっていったので、何も考えないで行きました(笑い)。そこらへんの気持ちというのは、監督や製作陣といったスタッフのほうがより(意図や狙いなどが)ありますので、ガラスの向こうから首を振ったり、俺がいい感じだと、うなずいてくれたり。あまり作り込んでいくと余計なことだと(思った)」とフラットな状態で収録に臨んだという。そして「もちろんシーンによってはちょっとしたニュアンス、初めて恋愛をして好きになっていくといったようなものは、音とパッチと(メスのパキリノサウルスの)ジュニパーが動いている映像を見ながら、自分なりに感じてやりました」と場面ごとに意識を変化させた。
恐竜の生態や行動なども盛り込まれた今作では、親子の関係も描かれる。木梨さん自身の体験を参考にした部分があるかと聞くと、木梨さんは「うちのオヤジの話になりますと、商店街には強かったです(笑い)。商店街の信用や信頼、そして知り合いやいっぱい自転車を買ってくれる人にはサービスが多かったりして、商店街で人間関係を築いていました。僕は子どものころ、そういった親の姿を見て育ってたタイプなのでこれだと」と冗談とも本気ともつかないような回答。続けて「父・作三がモデルになったところはあります」と笑顔を見せた。
恐竜が主役の映画ということで、恐竜へのイメージなどを聞くと「子ども時代には恐竜のガチャガチャとか、(出身地の東京都世田谷区)祖師谷商店街の横には東宝さんや円谷プロさんがあったり、怪獣(ゴジラ)がスタジオの横にあったりというのを子どものころから見ていましたから、ウレタンってこうなんだとか、リアルとはどういうものかを、見るだけでなく触ったりと近いところにいました」と子ども時代の思い出を披露。続けて「ウルトラマン商店街としてウルトラマンの怪獣もいましたし、ライオン丸も撮影していましたから、自分の小さいころ、祖師ヶ谷大蔵から今日につながっているなというのがあります」と話し、笑いを誘う。
初めてはまったポップカルチャーは?と質問すると、木梨さんは物の収集やポップカルチャーよりも先にスポーツにはまったという。木梨さんといえばサッカーのイメージもあるが、サッカーの話を振ると「小学校から(サッカーという)団体競技を選びましたが、(今作に出てくる恐竜の集団も)“群れ”という団体競技なので、群れが移動していくときにはサッカー部に見えてしょうがないです」と笑う。「誰かが練習中に苦しくてくじけたときには周りの人間たちが助けて……というのが、今回も近いシーンがありました。団体活動の難しさと厳しさとか……」と思わぬ影響があったことを語る。
木梨さんはパッチがジュニパーと出会い、恋へと落ちていくシーンが印象的だと話す。その理由を「誰かを好きになり、もう一度会いたい、自分の思いを伝えたいというのは、自分に置き換えると、小学校などで『○○さんが可愛い』となって、クラス中(の女子が)足が速くて勉強ができる男の子がいいというとき、どう抜け駆けして自分の思いを伝えるかと考えたことを思い起こさせる。何も言えなくておとなしくしているのか、相手が言ってくるのを待つなどといった少年時代のことを思い出すようなシーンが、非常に可愛いと思いました」と話す。そして「きっと見に来る子どもたちもパッチとジュニパーを自分に置き換えられる部分もありそうなので、子供たちも何かむずむずしてもらえればいいですね。そして答えは自分で探す……と」と親目線で子供たちへの優しさと厳しさを垣間見せた。
製作発表時に完成したら息子たちに報告したいと話していた木梨さん。実際には「試写会のようなイベントをやっていることは知っているはずなんですけどね(笑い)。親としては、この映画をうちの子供たちがどういうタイミングで、いつ見るのか見ないのかというのを見ていようと思っています」と父親の顔をのぞかせる。そして「今作は『アバター』の映像技術を使い、よりリアルに7000万年前というのは一体何なんだというところまでやっています。クリスマスやお正月、チームアバターが『アバター』超えを狙う作品として、素晴らしい作品ができたと思います。ぜひ、ご覧ください」とメッセージを送った。映画は20日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で3D日本語吹替および2D日本語吹替・字幕同時公開。
<プロフィル>
1962年3月9日生まれ、東京都出身。石橋貴明さんとお笑いコンビ「とんねるず」を結成し、80年、日本テレビ系「お笑いスター誕生」で10週勝ち抜きグランプリを獲得し、芸能界デビュー。以降、フジテレビ系「とんねるずのみなさんのおかげです」や「ねるとん紅鯨団」など、社会現象を巻き起こしたバラエティー番組に出演する。歌手としても活動し、とんねるずとしてだけではなく、「野猿」や「矢島美容室」といった異色のグループやユニットでもヒットを飛ばす。最近では絵画の個展を開くなど創作活動も行っている。
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