「グランド・マスター」(2012年)などで知られるウォン・カーウァイ監督に見いだされて短編から長編映画へと企画が変更された作品「光にふれる」が8日から公開された。台湾実在の盲目のピアニスト、ホアン・ユィシアンさんの半生を本人が演じている。若者が仲間と出会い、夢に向けて一歩を踏み出す姿を爽やかに描き出している。第85回米アカデミー賞外国語映画賞台湾代表作品で、世界の国際映画祭で次々に観客賞を受賞している。
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ユィシアン(ホアン・ユィシアンさん)は生まれつき目が見えない。両親と妹と住む台中の田舎を離れて、台北の音楽大学に進学するため寮に入ることになった。才能に恵まれながらも、幼いころにコンクールで起きたある出来事がトラウマとなって、表舞台に立てないでいる。彼を心配する母親(リー・リエさん)は、大学にやって来ては見守っている。そんな様子を見ていた寮の同室のチンは、気さくにユィシアンに接し、「スーパーミュージック(SM)」というサークルを作り、ユィシアンを誘った。2人は大学で部員の勧誘にいそしむが、そこへ、シャオジェ(サンドリーナ・ピンナさん)が飲み物の配達にやって来た。声のきれいな人が好きなユィシアンは、彼女の声を一瞬にして気に入る。その後、偶然再会したユィシアンとシャオジェ。アルバイトをしながらダンサーになる夢を持つシャオジェとの出会いで、ユィシアンは少しずつ変わっていく……という物語。
本当に爽やかな映画だ。ユィシアンはピアノ、シャオジェはダンス。もう一歩というところで自分の殻を破れず、夢へ尻込みをしている。その心模様が繊細につむがれ、登場人物を応援したい気持ちでいっぱいになる。さらにユィシアンの母の気持ちも、短いシーンに細やかに織り込まれ、的確に伝わってくる。大学生になった息子をたくましく思うも、心配もする母。実話を基にしているだけに、思わず胸を突かれる。随所に使われるユィシアン本人が弾くピアノも、シャオジェのダンスとのコラボレートでは躍動感あふれ、仲間とのセッションでは、熱に満ちた絶妙な演奏を聴かせる。チャン・ロンジー監督は、1980年生まれ。今作のもととなった短編「ジ・エンド・オブ・トンネル(黒天)」が台北映画祭最優秀短編賞を受賞し、カーウァイ監督に才能を買われ、初の長編監督作となった。見えない世界を表す映像をはさみ、想像力を刺激してくる。8日からヒューマントラスト有楽町(東京都千代田区)、シネマート新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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