2013年末のミクシィ株高騰で一躍注目を集めたスマートフォン向けゲーム「モンスターストライク」(モンスト)。2013年9月から運営を始め、12月29日に利用者数100万人を達成。今年1月21日には200万人、2月17日は300万人を突破した。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を運営する同社だが、モンストでは、ミクシィという自社の巨大ネットワークに囲い込まず、口コミでの普及を重視した仕掛けで人気を広げている。ヒットの理由を探った。
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モンストが株価高騰を演出するほど注目された背景には、ウェブブラウザー上で遊ぶ「ブラウザーゲーム」ではなく、スマートフォンにダウンロードして遊ぶ「ネイティブアプリ」であったことが大きい。これまで、ミクシィなどのSNS事業者が提供してきたゲームはほとんどがブラウザーゲームで、会員の囲い込みと自社課金が前提となっていたが、ネイティブアプリは基本的にApp storeやGoogle Playのダウンロードサービスを通じた提供となるため、自社ネットワークに囲い込めない。また課金も両ダウンロードサービスを通すことで手数料として3割が取られるため、“もうけが薄い”と考えられてきた。
しかし、ガンホー・オンライン・エンターテイメントがネイティブアプリ「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)で大ヒットを飛ばし、業績と株価を上げたことから、ネイティブアプリによるビジネスが見直され、株式市場では「第2のパズドラ」探しが盛んとなった。モンストは「ポスト・パズドラ」の期待をかけられ、ミクシィの株価を押し上げることになった。
モンストは、手に入れたモンスターをパチンコの玉のように弾いて、画面にいる敵にぶつけて倒す……という基本料無料でアイテム課金制のゲームだ。遊び方は簡単だが、弾く強さや方向によって結果が変わるため、誰でも楽しめる一方、ゲーム的な面白さがきちんとある。ユニークなのは、近距離通信という手法。最大4人で一緒に遊べるのだが、インターネットで他の利用者を募らず、現実に間近にいる人とだけ一緒に遊べるというスタイルを取っている。
他のSNSで運営されるブラウザーゲームは、当然ながら自社のSNSの利用者同士で協力・対戦するという手法が取られている。モンストは、既に巨大なSNSを持っている企業としては極めて異例の作戦であるといえる。
ミクシィのモンストスタジオ プロデューサーを務める木村弘毅さんは「実際に近くにいる友人と協力してゲームを遊ぶ楽しさを届けることが狙い」と明かす。つまり企業の論理を優先した囲い込み策ではなく、学校や会社など、毎日顔を合わせる人と一緒に遊ばせるなどゲームとの接触を重視。口コミによる広がりを重視した戦略だ。
友達同士でゲーム機を持ちより一緒に遊ぶというスタイルは、「ポケットモンスター」や「モンスターハンター」など既存の携帯ゲーム機では当たり前に見られた光景だ。だが、モンストには、大ヒットした“先輩”と比べてさらなる利点がある。それは、ゲーム機ではなくスマートフォンで遊べること、ソフトが無料である点だ。
総務省が昨年発表した通信利用動向調査によると、スマートフォンの世帯所持率が5割となるほど急速に普及。さらに13~29歳の各年齢階層ではスマートフォンの利用が携帯電話の利用を上回り、今後もさらなる数字の上積みが見込まれている。つまりモンストが遊べるハード(=スマートフォン)は携帯ゲーム機よりはるかに普及しており、ゲーム機ソフトを上回るヒットを飛ばせる可能性があるのだ。
モンストの利用者について、ミクシィは個人情報を取っていないため詳細は不明だが、反応を見る限りでは、利用者は学生が中心という。木村さんは「今後も引き続き友人との協力プレーを楽しめる仕掛けや、多くの層に遊んでもらうためのプロモーションを行う」としている。
今後はビジネスとしてヒットさせるため、収益構造の構築が課題となりそうだ。ともあれ、半年足らずで300万人の利用者を得た意味は大きく、新しいビジネス展開の足掛かりをつかんだといえる。巨大なSNSを持ちながら、あえて違う手法により利用者を囲い込んだ同作の誕生とその新手法は、今後も注目を集めそうだ。(石田賀津男/フリーライター)
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