昨年、社会現象にもなったテレビアニメ「進撃の巨人」の後期エンディングテーマ「great escape」を手がけ存在感を見せたロックバンド「cinema staff」。「great escape」以降の変化、2日にリリースした最新アルバム「Drums,Bass,2(to) Guitars」について、また、度肝を抜くライブステージなどについて聞いた。
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−−「進撃の巨人」のタイアップ以降、みなさんを取り巻く状況はどんなふうに変わりましたか?
三島想平さん:単純に忙しくなりました(笑い)。アニメのイベントへの出演が増えて、「進撃の巨人」のイベントで横浜アリーナ(東京都港北区)にも出させていただいて。そこでは、バンドやロックが好きというのとは違うお客さんに対して、どういう気持ちでどういう演奏をするかを考えたし、すごく勉強になりました。あと、せっかくこういうチャンスをいただいたという責任というか……ちゃんとカッコよくいなくちゃいけないって、帯を締め直す気持ちにもなりました。あと個人的には、昨年はよく親戚にサインを頼まれました(笑い)。
飯田瑞規さん:音楽に興味がない親戚とかが連絡くれるようになったのは、それだけ世間に浸透したということだから、うれしいですよね。
久野洋平さん:おじいちゃんとかおばあちゃんとかの世代は、テレビに出るくらいにならないと理解してもらえないですから。その点では、すごく大きかったです。
辻友貴さん:うちは、親から音楽活動をあまり理解してもらえていなくて、実家に帰るたびに「いつまで遊んでいるんだ」っていわれてたんです。だから「進撃~」のとき、やっと少し親を安心させることができたかなって。
−−「進撃の巨人」の大ヒットが、逆に自分たちの活動をしばっていると感じたことは?
三島さん:正直、多少あります。いつも「ああ、進撃の」っていわれてしまうし。でも、それは一生ついて回ると覚悟していて、それよりも、もっとオリジナルなことをやっていきたいと思う気持ちのほうが、今は大きいですね。
久野さん:それだけじゃねえよ!って反発する気持ちもあるし、逆にそういうの(要素)が一つでもあるのは、ありがたいことだと思うし。その上で、それだけじゃないところを見せるチャンスを、一つずつ大事にしていけたらなと思っています。
−−「進撃の巨人」をきっかけに、cinema staffという名前がより広く知れ渡りました。そこでもう一歩踏み込んで、自分たちはこういうバンドなんだ!と、発信したのが最新アルバム「Drums,Bass,2(to)Guitars」ですね。
三島さん:まさにそうです。タイトルは、バンドの楽器編成をそのまま書いただけなんですけど(笑い)。
飯田さん:今回は、タイトルの「Drums,Bass,2(to)Guitars」にも表れているように、それぞれの力を持ち寄ってアルバムが作れればいいなと思って。それで、今回は「unsung」という曲で僕が作詞をしたし、「sitar of bizarre」という曲では、辻くんが元のアイデアを持ってきたし。曲作りの過程でも、各メンバーがいろいろな意見やアイデアを出し合って、その結果、アルバムになりました。
辻さん:「great escape」のイメージだけじゃない、なんでもありますっていうのが出せたらいいなと思って。
−−サウンドは轟音のギターロックだけれど、物語っぽい歌詞で、ハイトーンの憂いのあるボーカルというギャップに、すごく引きつけられますね。
飯田さん:歌詞とか歌メロは、スッと入ってくる感じがあって、どんなシチュエーションで聴いてもいいなって思えるものだと思うんです。この音に乗せてそれを歌うことで、心地よさがすごく際立つと思うし。結成から10年くらいの期間で、徐々にそういう形ができていって、今は他のバンドにはない絶対的な武器になっていますね。
三島さん:それぞれエモやハードコア、ポストロックとか、ハードで荒々しいサウンドから影響を受けているけど、歌は普遍的でありたいというか……。そもそも僕の音楽の原体験に、(男性デュオの)ゆずさんとか王道のポップスがあるんです。だからメロディーは、誰でもふっと口ずさめるようなものを意識していて。前向きな歌詞が多いので、ポジティブな気持ちになりたいときに、聴いてもらえたらうれしいですね。
久野さん:あと、すごく外に向けて広がっているアルバムになったと思います。前はわりと、内側にこもったものが多かったんですが、「great escape」以降はライブの回数も増えて、お客さんに楽しんでもらうことが、自分たち自身の楽しみにどんどんなっていって。そこで生まれた、ライブでみんなで楽しめる曲をたくさん作りたいという気持ちが、根底にはありました。最近はたまにアマチュアのバンドの子から、「コピーしてます」といってもらえることがあって、それがすごくうれしくて。アルバムを通して、音楽とかバンドは楽しいんだよってことが伝わったら最高ですね。
−−みなさんのライブは、非常にアグレッシブなステージングが特徴ですね。インタビューのときは小動物のように大人しい辻さんが、豹変(ひょうへん)して暴れまくる姿を見て、驚く人も多いんじゃないですか?
三島さん:ちゃんと演奏している時間よりも、転げ回っていて弾いていない時間のほうが長いくらいですからね(笑い)。
久野さん:「進撃の巨人」のイベントとか、Linked Horizonさんのイベントに呼んでいただいたときは、みんな辻くんにくぎ付けになっていましたよ。
飯田さん:僕らもけっこう激しく演奏しているはずなんですけど、辻くんが誰よりも激しいので、僕らがまったく目立たないんです(笑い)。ライブには、視覚的に面白いとかカッコいいとかっていう部分も必要なので、辻くんの存在はすごく大きいのですが、ヒヤヒヤすることも多くて……。
辻さん:昨年7月にZepp Tokyo(東京都江東区)でやったLinked Horizonさんのイベントのときは、ステージから飛び降りて両足を骨折しちゃって(笑い)。次の日がツアーのファイナルだったんですけど、みんなにすごく迷惑をかけてしまった……。
−−5月17日からは、全国ツアー「Death Bandwagon 2(to) Glory」を開催。最後に意気込みをお願いします。
三島さん:ワゴン車に機材を積んで、メンバーとマネジャーとかスタッフが乗り込んで全国を回るんです。それで長距離移動なんで、せまいし、つらいし、まさに死のバンドワゴンみたいな。それでも栄光に向かって頑張っていこうという意味で、こういうタイトルにしました。ツアーファイナルの6月26日のZepp Diver City(東京都江東区)は、バンド史上最大のキャパ(収容人数)で、しかも平日だし、不安も多々ありますけど、栄光に向かって頑張ります。
飯田さん:たくさんの人に見てもらえたらうれしいですね。
久野さん:早くみんなで歌いたいです。
辻さん:また何か起こる(起こす)と思うので、楽しみにしていてください!
三島さん:ケガだけは勘弁な!(笑い)
<プロフィル>
2003年に結成、メンバーは辻友貴さん(ギター)、三島想平さん(ベース)、飯田端規さん(ボーカル&ギター)、久野洋平さん(ドラム)。インディーズ活動を経て、2012年に1st E.P.「into the green」でメジャーデビュー。これまでに「望郷」など3枚のアルバムなどリリース。昨年、アニメ「進撃の巨人」後期のエンディングテーマを担当、「great escape」が自身最高位となるオリコンウィークリーチャート12位を記録。5月17日の千葉LOOK(千葉市中央区)を皮切りに、ファイナルとなる6月26日・Zepp DiverCityまで、全国14都市を回るワンマンツアー「Death Bandwagon 2(to) Glory」を開催。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)
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