TBS:なるか半沢超え 「ルーズヴェルト・ゲーム」逆転劇の仕掛けとは

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 大ヒットドラマ「半沢直樹」(TBS系)を送り出した制作陣が再集結し、同じ池井戸潤さんの原作で描く連続ドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」(同)が27日、「半沢」と同じ毎週日曜午後9時からの「日曜劇場」枠でスタートする。今回のテーマは“逆転劇”。最終回で連ドラでは今世紀最高の視聴率42.2%をたたき出し、決めぜりふ「倍返し」が「2013 ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれた「半沢」の高いハードルを超えられるのか、伊與田英徳(いよだ・ひでのり)プロデューサーへの取材を交え、ドラマヒットの仕掛けを探った。

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 ◇新たな試みカットバックドラマ

 ドラマは、池井戸さんによる同名の企業小説が原作で、伊與田さんがプロデューサー、八津弘幸さんが脚本、福澤克雄さんが演出、服部隆之さんが音楽を担当するなど「半沢」のスタッフが再集結。中堅精密機器メーカー「青島製作所」の存亡と同社の名門社会人野球部の廃部を懸けた攻防が描かれる。ちなみにドラマのタイトルとなっている「ルーズヴェルト・ゲーム」とは、“奇跡の逆転劇”を意味し、野球を愛した第32代アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトの「野球で一番面白いゲームスコアは8対7だ」という言葉に由来している。

 今回のドラマについて伊與田プロデューサーは「会社の話と野球の話を同時に描くカットバックドラマ」という。カットバックとは二つの場面を交互につないで切り返す場面転換の技法で、海外ドラマなどでよく使われているが、今回は同じ青島製作所の経営の問題と野球部のストーリーが同時並行して進む形となる。「全く違う野球と経営をやっているけれど、テーマは一緒だし、富士山は上るコースが違っても、頂上で握手できる。ドラマも最後握手できればいい。今のところうまくいっていると思う」というが、「カットバックは挑戦的な試み。(主役の)細川社長(唐沢寿明さん)が監督になる話じゃない。別ものだけれど思いは一緒だと、どう描くか……」と、その難しさも明かす。

 「半沢」では、銀行内部のディティールがドラマのリアルさを引き立てたが、今回もディテールに関してはこだわっている。特に野球シーンはこだわり十分。部員には、演技はもちろん、実際に野球のできる100人くらいをオーディションして「チームを作るつもりでノックした」という。「(演出の)福澤(克雄監督)は、『野球が嫌いな人は見なくて結構。しょうがないじゃない』と言っているけれど(笑い)……。僕も野球好きに見てほしいけれど」と苦笑しつつも、野球にあまり興味がない女性にも、分かりやすい演出は加えているという。

 ◇「勧善懲悪の時代劇」から「ライバル対決の逆転劇」へ

 「半沢」は原作者の池井戸さんが「チャンバラ活劇」と語っているように、善の半沢が悪をたたく“勧善懲悪”で時代劇の構造があった。今回は、主役の細川社長らが、さまざまなライバル対決を繰り広げ、逆転劇を生み出していく。ドラマでは、細川社長率いる青島製作所と競合のイツワ電器というライバル会社同士が対決し、両社は野球部同士でもライバル関係、社内では、中途採用で社長になった細川と社長の座を奪われた笹井専務(江口洋介さん)の不透明なライバル関係も描かれる。

 対決の主役を演じる唐沢さんについて伊與田プロデューサーは「前に突き進む力を持った数少ない役者さん。役的には中途採用で、会社を引き上げていく前に向かう力強さが、唐沢さんの持っている魅力にリンクした。『ミスター主演』だと思っている」と起用理由を語る。唐沢さんの反応については「(オファーしたときには)面白い。『いいドラマになると思うよ』と言ってくれた。(プレッシャーは)本人に聞かないとわからない(笑い)」と語った。

 ◇原作との違いは?

 「半沢」が、池井戸さんの「オレたちバブル入行組」と「オレたち花のバブル組」の小説2冊を原作にしたのに対して今回は1冊。ページ数でいえば「半沢」より原作の量が少ないのは確かだ。伊與田プロデューサーは「池井戸先生がリアルに掘り下げて丁寧に物語を書き込んでいるので、台本にするといろんな話が同時進行で進んでいるので、そんなにオリジナルを加えなくてもいけている感じ」「大きな骨に関しては、オリジナルは少ない」と、5、6話まで撮影進行中の現状を語る。

 「半沢」では半沢の父親の敵役を原作から変えたが、今回も演出上の理由から設定を変更した部分がある。細川社長と反目する立場にある笹井専務の設定を、原作の年上から社長と同年代にし、江口さんをキャスティングした部分だ。伊與田プロデューサーは「唐沢さん演じる新参者の社長と、昔からいる専務たち役員の対立構造を描きたいと思った」といい、「ライバル関係を明確にするには、年上よりも、同年代の方が面白い。だから、池井戸先生に『この大きな設定だけ変えさせてほしい』とお願いした」と明かした。

 ◇名誉挽回?半沢のあの悪役たちが……

 唐沢さん、江口さん以外にも、注目したい出演者が数多くそろう。特に、半沢と対立する支店長役で見事な憎まれ役を演じた石丸幹二さんが廃部寸前の野球部を守ろうと奔走する総務部兼野球部長の三上文夫役、半沢の同期・近藤に嫌がらせする銀行マン役だった手塚とおるさんがデータ野球で野球部の窮地を救う新監督役と“名誉挽回”となる。

 一方、半沢とのバトルを繰り広げた最大の敵役・大和田常務役を演じた香川照之さんは別格。今回も仕入れ値の値引きを青島製作所を迫り、窮地に陥れる大手企業「ジャパニクス」の社長役で出演しており、「半沢」ファンなら思わずニヤリとしてしまうのではないだろうか。

 ◇“決めぜりふ”は……

 「半沢」では「倍返し」という“決めぜりふ”が流行語大賞になったが、今回はあるのか。伊與田プロデューサーに聞くと、「テーマは『逆転に次ぐ逆転』だが、まさか、『逆転だ!』と言わせる訳にもいかない。今回は特に意識していない」と笑うが、「半沢」の倍返しのシーンのようにスカッとする逆転劇は、数多く用意されているという。「視聴者にスカッとしてもらいたいし、自分もスカッとしたい。毎回かはまだ分からないですが、1話でも逆転劇があります。2話目もスカッとさせます!」と、“逆転劇”を予告した。

 最後に、ドラマ初回への思いと「半沢」越えの自信を聞くと、「ルーズヴェルト・ゲームは、いつも勝っているわけじゃない。もちろん、『半沢』と同じメンバーが集まっているし、意識はされるかもしれないが、去年は去年。今回は今回で面白い」と自信をのぞかせた。他局で同じクールに放送されている池井戸さん原作の連続ドラマ「花咲舞が黙っていない」(日本テレビ系)については、「女性主人公ならではの繊細さがある。気にはなりますけれど、意識している余裕がありません」とドラマへ全力を注いでいる。

 「ルーズヴェルト・ゲーム」は27日から毎週日曜午後9時から「日曜劇場」枠でスタート。初回は25分拡大で放送される。

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