東京・渋谷の女子高生を対象に行ったJ−POP期待度ランキングで、最新曲「Oh JANE」が1位を獲得した片平里菜さん。女性シンガー・ソングライターが注目を集めている音楽シーンで、独特の存在感を発揮して話題を集めている。そんな片平さんに、新曲「Oh JANE」を中心に話を聞いた。
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−−有線放送のキャンシステムが渋谷の女子高生を対象に行った調査で新曲「Oh JANE」が1位を獲得したとのことですが、感想は?
渋谷の女子高生は流行の最先端を行っているイメージなので、そんな中で1位というのはすごくうれしいです。それも名前を伏せた状態で、純粋に曲だけを聴いてもらって判断してくださったということで、すごく自信になりました。
−−片平さんがシンガー・ソングライターになったきっかけは?
中学3年生のころから音楽の道を志していたのですが、最初は単に歌手を目指してオーディションを受けていたんです。それで何度も落ちているうちに、曲作りやライブをやってみたらと周りから勧められ、実際にギターを始めたのは高校3年生のとき。同時に見よう見まねで作詞・作曲するようになりました。
−−もともと女性のシンガー・ソングライターの曲が好きだったのですか?
音楽好きの父やバンドをやっていた兄の影響で、子どもの頃からいろいろ聴いていたんですけど、女性アーティストの曲を意識して聴くようになったのは、アヴリル・ラヴィーンでしたね。中学のとき、部活のない日にCDショップに行って、試聴機でいろいろ聴いていく中でアヴリルを見つけて。若い女の人が頑張っている感じが、すごいと思ったんです。それからさかのぼるようにして女性アーティストの曲を聴くようになり、今の自分のスタイルに影響を与えているのは、アラニス・モリセットやジョニ・ミッチェルなどです。強い女性というか……弱さをさらけ出して、自分を表現しているところが、カッコいいと思いました。最近よく聴いているのは、エイミー・マンやトレイシー・チャップマンなどです。
−−そんな片平さんの最新シングル「Oh JANE/あなた」ですが、「Oh JANE」は、すごくポップでカラッとした曲調です。歌詞は、より女の子の内面を描いたものになりましたね。
前作「女の子は泣かない」は、友だちの実体験を基に書きましたが、「Oh JANE」は素の自分がすごく反映されましたね。日常的に曲作りをしている中でできたのですが、普段からためていた気持ちをはき出してみたら、とてもキャッチーで面白い曲になりました。
−−冒頭から「たまには乱れてみたい」と始まります。
実際には乱れられないと分かった上での願望です(笑い)。曲の中なら、そのくらい出してもいいかなって。昨年5月にできた曲なんですが、まさに最初の「乱れてみたい」というフレーズが最初に思いついて。面白いと思って書き進めるうちに、女性の内面を書いたものにしようと思って。それで自分の気持ちやこういう女性でいたいという理想像を入れながら書き進めました。
−−タイトルの「JANE」は、女の子の名前ですよね。
はい。歌詞に「Mary JANE」と「GI JANE」という、2人のJANEが出てくるんですけど、私は映画がすごく好きで。「Mary JANE」は、アメイジングの前のシリーズの「スパイダーマン」に出てくるヒロイン。華奢(きゃしゃ)で可憐(かれん)で、いつもスパイダーマンに助けてもらっている。「GI JANE」もそういう映画があって、海兵隊に入隊して男性社会を生き抜いていく力強い女性が主人公です。誰かを愛するためにはたくましさが必要で、人に愛されるためには可愛らしさも必要。そういう女性の二面性の象徴です。その両方を持ったら、女は無敵になれるんじゃないかと歌っています。
−−男性に対して、女性に夢を見ないでちゃんと愛してほしいと歌っているところもありますね。
別に男の子を攻撃しようと思ったわけじゃないんですけど(笑い)。私、見た目や話した感じから、ふんわりして女の子っぽいとよくいわれるんですが、全然そういうのじゃないんです。根っこは行動派だし、何かしたいと思ったら直感的に動くし。要は一人の人として、ちゃんと見られたいという願望があって。そのためには、年齢とか男女とかの垣根を越えなくてはいけなくて。そういうことを考えていると、いつも最終的には、なんで自分は女なんだろう?っていうところに行き着いちゃうんですよね。
−−子どものころから、一人の人として見てほしいという考え方だったのですか?
学校の教室という一つの空間に、生まれも育ちもまったく違う30~40人が押し込められて、規則正しく生活するというのが、とても息苦しいと思っていました。何かの枠に収まるのが苦痛だったという部分では、自由になりたかったのかもしれません。それは今でも同じ気持ちです。
−−そして、両A面のもう1曲「あなた」は、一転してミディアムバラードですね。
これは東日本大震災のちょっとあと、18歳か19歳のころに書いた曲です。あまり考えず、なるべく無心で作ろうと思って、心に響いてきた言葉を選んでいった感じです。だから、「あなた」という特定の対象があって書いたわけではなくて。自分にとって大事な存在の人はどういう人なのかな?って想像したら、家族もそうだし、友だちもそうだし、誰か一人には絞れなかった。聴いてくれた人が、それぞれで当てはめて聴けるようなものにしたかったというのもありました。
−−「なぜ人は忘れてしまうんだろう?」というフレーズで始まるのが、ちょっとドキッとさせられる感じがしました。
そうですね。今は、人はそういうふうにできているものだと受け入れていますけど。書いた当時は、なんで忘れちゃうんだろう? なんで思い出を大事にできないんだろう?ってすごく考えていたんです。私はこうやって、曲を作ることが好きだし、なに一つ忘れたくない。伝えることに執着があるというか……。後世に伝えていかなきゃという気持ちが強いので、そういうフレーズが出てきたのだと思います。
−−3年くらい前に書いた曲を今リリースするのはどういう気持ちですか?
今回シングルを出すと決まったとき、映画「ライヴ」の主題歌に選んでいただいて。それで、新たにアレンジを施そうということで、久しぶりに引っ張り出してきたんです。もうライブで歌うこともないだろうと思っていたので、CDに収録されることになるなんて想像もしてなくて、驚いたと同時にうれしくもありました。映画には流血シーンとか怖いシーンも多いんですが、作品の根底には、家族とか大事な存在を守るために闘うというテーマがあって。そういう部分で楽曲を選んでくれたと思うので、先入観なくたくさんの人に聴いてもらえたらうれしいです。
−−では最後に、片平さんにとって音楽とはどういうものですか?
本来の自分は感情の起伏が激しいんですけど、それを抑えてしまう自分がいて。でも音楽では、抑えることなくおなかの中にある感情をはき出すことができる。そういう意味では、私にとって音楽は、とても神聖な場所です。それに音楽がなかったら、すごく不健康になっていたと思います。結構ストレスをためちゃうほうなんですけど、ライブをやると直るんですよ(笑い)。表現することが好きなので、もし声が出なくなったら、絵を描くとか代わりを見つけると思うんですけど……。でも今は、歌ですね。今も歌いたくて仕方ないです!
<プロフィル>
1992年5月12日生まれ、福島県出身。ロックフェスティバル「閃光ライオット2011」で1万組の中から審査員特別賞を受賞。ギブソン社のギターブランド「エピフォン」から、日本人女性初の公認アーティストに認定される。2013年8月にシングル「夏の夜」でメジャーデビュー。現在、7月11日の東京 自由学園明日館講堂まで続く「片平里菜 あの場所で偶然 弾き語りツアー2014」を開催中。5月24日の「風とロックCARAVAN福島~岩瀬郡天栄村~」、5月25日の「GREENROOM FESTIVAL’14」などにも出演予定。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)
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