テレビ質問状:ノンフィクションW「“テヘランダービー”イランが最も熱狂する日」

ノンフィクションW「“テヘランダービー”イランが最も熱狂する日~サッカーは革命と戦争をこえる~」
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ノンフィクションW「“テヘランダービー”イランが最も熱狂する日~サッカーは革命と戦争をこえる~」

 WOWOWは、毎週金曜午後10時に「ノンフィクションW」枠を設け、オリジナルのドキュメンタリー番組を放送中だ。この枠では、見る人を新しい世界へと誘うフルハイビジョンの“ノンフィクションエンターテインメント”番組をWOWOWプライムで毎週、テーマを変えて放送している。6月20日に放送される「“テヘランダービー”イランが最も熱狂する日~サッカーは革命と戦争をこえる~」を担当したWOWOWの制作局制作部の浦田健司プロデューサーに、番組の魅力を聞いた。

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 −−番組の概要と魅力は?

 サッカーのダービーといえば、世界はもうバルサ、レアルの戦いだというかもしれませんが、そのリーガ・エスパニョーラのクラシコをも超えるアジア最大のダービーが、今年のFIFAワールドカップに日本とともにアジアから出場するイランにあります。

 戦争や革命の間もイラン市民の“希望”として続けられたイランサッカーの象徴“テヘランダービー”。世界で最も危険だといわれたテヘランダービーは、国が問題を抱え、市民が戦いを強いられたときこそ、人々を啓蒙(けいもう)し、前進してきました。ダービーを戦う選手たちは危機に直面してもひるまず、サッカーを続けてきたのです。強く生き抜いた彼らには素晴らしい素質があると心から感じられます。イランサッカーには怖さもある、でも希望もあるから面白いのだと思います。日本初の密着取材から国政に翻弄(ほんろう)されながらも絶えることがなかったイランの人々のサッカーへの情熱に迫っています。

 −−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 イラン・イラク戦争が激化する中、テヘラン市街にミサイルが打ち込まれる直前まで行われた1983年のダービーに、史上最高の12万人がスタジアムに集まった当時の試合映像を見たとき、武力による恐怖は人々を支配することはできないのだと、スポーツが持つ大きな力を感じました。選手たちは、集まった12万人、スタジアムに入り切らずも押し寄せた20万人のファンたち、そして疲弊した国民や、戦地で戦う人々の思いを胸に戦っていました。そんな彼らの試合が忘れられず今回番組テーマに取り上げました。

 −−制作中、一番に心がけたことは?

 一切の先入観や偏見を捨てて、選手や監督、ファンたちの言葉に耳を傾けることでした。国際社会から“ならず者国家”と呼ばれたイランですが、実際、ワールドカップ出場を決めたアジア最終予選の対韓国戦の4日前まで、反政府デモで多くの犠牲者を出すなど混沌(こんとん)とした国政下で大統領選挙が行われるなど、イラン国内は安定していませんでした。そのため、慎重な取材が必要でしたが、イランで力強く生きる美しい人々の姿を見ることができたことは本当にうれしかったです。

 −−番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 何もかも整った国・日本と、弾圧の中、多くをなくしうる人々が生きる国・イランとでは“戦い”や“強さ”の定義もまったく違い、このテーマは簡単に話せることじゃないなと思いました。実際、この国で生きる人たちの人生は想像よりも荒々しいものでしたが、彼らはサッカー選手としてチャンスに恵まれなかったと嘆くこともせず、よりよい未来を考える人々の姿があふれていました。既に世界から名声を与えられた国の物語より、きっと面白いと思います。

 −−番組の見どころを教えてください。

 テヘランに本拠地を置く二つのサッカーチームが対戦する“テヘランダービー”。軍と市民の代理戦争といわれ、国を真っ二つに分けたダービーは、かつて体制派と反体制派の戦いの場所でもありました。軍によって創設された“エステグラル”と学生や教師といった市民たちによって創設されたチームをきっかけに生まれた“ペルセポリス”。世界でも類を見ないこの因縁の関係はイランの歴史にあります。ダービーが最も輝きを見せた革命・戦争時の試合映像とともに熱き戦いの歴史に迫っています。

 −−視聴者へ一言お願いします。

 なかなか気軽に行ける国ではありませんが、この番組をきっかけにイランサッカーに興味を持ち、ワールドカップで戦う彼らの姿を見てくださったらうれしいです。傷が癒えきらないこの国でヒーローになるのは本当に楽じゃないのです。

 WOWOW 制作局制作部 プロデューサー 浦田健司

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