次世代プロデューサーに聞く2:「王道のバラエティー」とは?

テレビの未来を語り合った次世代プロデューサー。左から「ダウンタウンDX」(読売テレビ)の勝田恒次さん、「リアル脱出ゲームTV」(TBS)の中島啓介さん、「ジョージ・ポットマンの平成史」(テレビ東京)の高橋弘樹さん
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テレビの未来を語り合った次世代プロデューサー。左から「ダウンタウンDX」(読売テレビ)の勝田恒次さん、「リアル脱出ゲームTV」(TBS)の中島啓介さん、「ジョージ・ポットマンの平成史」(テレビ東京)の高橋弘樹さん

 「笑っていいとも!」(フジテレビ)や「さんまのスーパーからくりTV」(TBS)など名物バラエティー番組が終わりを迎える中、各局の実力派プロデューサーがテレビの未来を語り合うイベント「テレビマンオールスター戦」が13日午後1時から、早稲田大学大隈記念講堂で開かれる。イベントを前に、「ダウンタウンDX」(読売テレビ)の勝田恒次さん、「ジョージ・ポットマンの平成史」(テレビ東京)の高橋弘樹さん、「リアル脱出ゲームTV」(TBS)の中島啓介さんの、次世代のテレビを担う3人のプロデューサーに「テレビの未来」を聞いた。第2回は、テレビとインターネットの融合と、「王道のバラエティー」で盛り上がった。

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−−テレビとネットの融合ですが、「ダウンタウンDX」ではツイッター連動を積極的にされていますね。

勝田 2、3回で生放送で視聴者のツイートを画面に出したりしています。裏では人間がチェックするアナログのやり方ですが、生の声を出すことで、視聴者に番組を見続けてもらう演出として使いました。

−−「ガリゲル」でも「*」をツイートしてもらって、画面に“雪”を降らす企画をしましたね。

勝田 あれは手応えが一番ありました。関西ローカルの番組ですが、ツイッターの対応は東京でしていましたが、ネットと視聴者の近さを一番身近に感じられました。視聴者がリアルタイムで見て参加しないといけないと思わせた。一つの手法としては成功したなと思います。「ガリゲル」は、スポンサーの理解も深いので、話題になってることを早め早めに取り入れてやれるという意味ではやってよかった。

−−中島さんはさらにアグレッシブですよね。

中島 ネットとテレビの融合をなんとかしないといけないという気があって、各局やり出しましたよね。2年前ぐらいに、あれこれでいいんだっけ?と疑問に感じました。ネット使ってるから製作費としては余計にお金かかっているし、本当に面白いのか? 誰にとって得がある? これって本当に融合?って。

 先ほども言いましたが、ウェブから広告予算を取り戻すという視点で実験したんですが、大手ポータルののトップページのバナーで車1台プレゼントします、というキャンペーンを1週間やるより、面白いテレビ番組の中で1回どんと告知した方が、応募が4倍ぐらい多かった。一番最初の接点ではテレビの強さがある。その後ウェブに巻き込んでいくのが効果的。自分としては、ただやってみるという時期は過ぎて、営業の売り上げにつながるためにネット連動をするという時期に入ったと思っています。

−−高橋さんは?

高橋 ネットは使ったことないし、使おうと考えたことすらない。自分が作った映像の出口として流せる場所だなという認識しかない。テレビでできなかった企画、もうちょっととがったせまーい世界というのができるのがうれしい。連動は2、3年前に考えたことはあって、企画を書いたこともある。でも書いて出す前に自分で面白くないと思った。「リアル脱出ゲームTV」みたいないい企画が思いつかなかった。僕はこういう才能ないなと思いました。

−−動画でトライアルできるということですね。

高橋 自分の中で切っている企画書がいっぱいあって、ひょっとしたらツイッターとかざわざわするかもしれないけど、視聴率は取れないからダメだということでテレビではできなかったものが、動画サイトでは出せる。出口が増えて、いろんなもの作れる幅が広がるなと感じます。

勝田 YouTubeのテレ東のチャンネルはすごいですよね。オリジナルで。

高橋 (「モヤモヤさまぁ~ず」プロデューサーの)伊藤(隆行)さんがやってるので、従わざるをえない(笑い)。20年後を考えたとき、技術的にはインターネットでもテレビ番組を流せるわけだから、もうネットとテレビの融合なんて言ってる場合ではなくなっているかもしれないですよね。

−−ネットの動画についてはどう感じますか?

勝田 東洋経済とか動画を始められて、作り手を見つけるのが大変と聞いた。各局も流すだけになっていて、作り手の奪い合いになるなという危惧を多少感じていたりする。メディアが増えてくると、そこに対する危機感を多少は感じてますが、まだまだテレビは強いなと。視聴者もテレビの力を逆に再認識して見てくれるんじゃないかと思う。

−−バラエティーの世界では、フジテレビの「笑っていいとも」が終わりました。

高橋 率直に寂しいなと思いますけど、「いいとも」みたいな番組はまた出てくると思う。お昼に“どバラエティー”みたいな番組が必要だし、(後番組の)「バイキング」がうまくいくか分からないけど、また違うバラエティーも出てくるでしょう。あれでひとつの時代が終わったとは思わない。

中島 まったく同感。終わってしまったことはすごい寂しい残念な話かもしれないですけど、「いいとも」は影響力のある番組に間違いないですが、あれがテレビの一時代の区切りと言われても……。もっと面白いバラエティーたくさんあるし。

−−お二人の先輩の伊藤さんやTBSの合田隆信さんと話したときは「いいとも」終了で盛り上がったんですよ。

高橋 意外と淡泊だった(笑い)。

勝田 私は、グランドフィナーレで、テレビの世界に入ったころのスターが全員出ていたので、やっぱり感動しましたよ。これがやりたくてテレビ入ったって、あのころの気持ちを思い出しました。

中島 僕も何度も見ましたけどね。面白かった。

−−ただグランドフィナーレがあれだけのオールスター出ていて、平均視聴率28.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)でした。バラエティーの限界って感じますか。

勝田 限界は感じたことはないが、20年前ってDXもそうですが、画面上にテロップ0の時代あって、サイドスーパー、コメントスーパー、もっと丁寧にやりましょうかと各局やってきて、技術は上がるんですけど、逆に面白みがなくなってきたと感じることもある。バラエティーって切り口一つだったりするんで、そこを次、どの局の誰が見つけるか。そこを奪い合うというのを、常に神聖な気持ちでやっている。

−−「ダウンタウンDX」は王道のバラエティーですよね。中島さんはどう感じます。

中島 僕も王道のバラエティーをやりたいと思うし、「DX」とかすごいなと思う。数字を取るバラエティー。面白いですし。すごいなと思います。自分は深夜中心にやっていますが、昔に比べたら、7時台、8時台、9時台より、24時台に若い人が生息しているのは明らか。深夜で若い人向けに作っているつもりです。自分の今の感覚、面白いなと思うものに合わせて作っているつもり。僕は、20代くらいを狙って作るのが役割で、ゴールデンは、すべての層が面白いものを作るわけですから、深夜番組を作るより難しい。今はゴールデンで視聴率を取る王道のバラエティーを作る力もないですし。

−−王道を作る力って?

中島 ゴールデンのバラエティーで10%を超える番組って、誰から見ても面白い。そういう番組をまず作っていない。勝負したこともない自分がそれを語る資格ない。「リアル脱出ゲームTV」でも、なんとなく局内では、一応意義のあることやってるふうだけど、世帯視聴率よくないから、あいつそういう感じかーというような目線を感じたりするわけで(笑い)。テレビマンとしては、世帯視聴率で評価されたい気持ちある。

 でもぶっちゃけいうと分からない。自分はネット連動とかやってるけど、あんなものなかった方が、視聴率を取れた可能性もあったりする。あって世帯視聴率取れるというのはすごいと思うけど、今のところ見たことない。ややめんどくさいものに感じたりとか、企画してても面白くない。「リアル脱出ゲームTV」とか、自分の母親だったら、“100億%”やらないなと思うし、母親が面白いという物をつくるというのは一つのテーマであったりします。それがゴールデンで視聴率を取るということなのかもしれませんが、自分はまだそこに上がっていけないので、自分は人ができないところで勝負することで、好きな演出をできていたりするんですよね。

−−高橋さんはバラエティーの可能性ってどう思いますか。

高橋 そんなバラエティーって、ふりかぶるものでもないので、可能性とか限界があるとかないとか考えたことない。楽しんでもらえればくらいで見てますけどね。

−−伊藤さんは「王道のバラエティーはテレ東ではできないからやっていない」と言っていました。

高橋 それはテレ東にいる限りずっと考えている。ゴールデンですべての人の視聴率を取るということを目指さないといけないし、目指しますが、目指し方がテレ東は違う。ちょっと“外道”にいかないと。僕の中での位置づけで、伊藤さんはそれでもテレビ東京を王道に持っていこうとちゃんとしている人。とんねるずさんを連れて来たり、すごいなと思います。

 伊藤さん以外のテレビ東京局員は、恐らくそんな王道を目指していない気がする。ゴールデンで視聴率を取ることは目指していますが、それが王道かって言われたらそれは王道でない気がする。育ってきた風土が「空から日本を見てみよう」や「テレビチャンピオン」だったから、正攻法でいくという手法が分からない。ダウンタウンさんを据えて、そこに自分たちが面白いと思ってきた人をちゃんと選んでっていう発想はなかなか出ないし、今からやれと言われてもできないです。

−−テレ東としてどういうもの目指す?

高橋 僕もゴールデンで視聴率残したことないので、あまり偉そうなことをまったく言えないし、基本的には分からないというスタンスなんですけど。肌感覚で10年会社にいて感じるのは、深夜はたぶん若干マーケティング理論が通じると思う。ターゲットがはっきりしているから。ただ、ゴールデンは、さっき中島さんがおっしゃったように、すべての層がターゲットなんです。そうすると、マーケティング理論が通じにくいんじゃないかなとという気がしています。

 ただ、はじめ10%からスタートできるような番組を作るときは、なんとなく肌感覚ですけど、それはやっぱり面白いなと思ったものをひょいっと出すみたいな。うちの局だと「Youは何しに日本へ?」とか見ていると、そんな気がしている。

−−王道をやってきた勝田さんはどう?

勝田 読売テレビって準キー局なんで。ゴールデン2枠しかないんですね。木曜午後9時の「秘密のケンミンSHOW」と10時の「DX」しかない。そこはやっぱり王道でなければならない、プラス、うちの局として2枠を守らないといけないというのがあるので、さらに王道を乗せないと。王道の王道みたいな感じがします。そこを守らなければいけないので、自分がやりたいことプラスアルファーでその使命を常に感じながらやるのでは、キー局さんとちょっと違うと感じますね。

−−番組の中での工夫は

勝田 そこを見せないようにする。昨日飲み会をやっていて、異業種の女性がいたんです。その人が「『DX』って知ってるけど、あれって芸能人がパーッとトークしたのをパーッと流してるやつでしょ」と言ってて、「やった!」と思ったんです。それくらい気楽に見られてる。後ろで、めちゃくちゃやってるのに、そこが見えていない。あーよかったと思ったんですよ。演出としてはこうしゃべってこうやってくださいというのを、はめに行く作業ですから、ゲストには得意な人と不得意な人が出ますけどね。でもそこは視聴者にまだばれていないと思って、すごく心でガッツポーズでした。

−−ダウンタウンさんはどういう存在なんですか?

勝田 常に緊張を与えてくれるというか。いい意味でなあなあにならない形をずっと作ってくれるのでありがたい。近いところは近いように、距離を置くところ置いて。ピリッてするモードを常に絶やさない。それは収録時、収録の合間もそう。いい意味で距離感を詰めてくれるときもあるけど、戦友とか仲間も思いながらも、いい意味で出る側と作る側というのを常に一定の距離を保つ。ほかのタレントさんとは違うと思いますね。このぐらいでいいだろうという慢心に陥るかもしれないところを、止めてくれている感じがする。お二人に任せたらここまでやってくれるだろうっていう心をなくすというか、お二人がやってくれるだろうから、さらにそこに向けていい素材を渡すというのを常にみんなやれるという統一感ができている。20年間ずっと思います。そういう意味では、二人とやることが次のテレビを目指しているというのは間違いなくありますね。

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