次世代プロデューサーに聞く3:10年後のテレビはどうなっている?

テレビの未来を語り合った次世代プロデューサー。左から「ダウンタウンDX」(読売テレビ)の勝田恒次さん、「リアル脱出ゲームTV」(TBS)の中島啓介さん、「ジョージ・ポットマンの平成史」(テレビ東京)の高橋弘樹さん
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テレビの未来を語り合った次世代プロデューサー。左から「ダウンタウンDX」(読売テレビ)の勝田恒次さん、「リアル脱出ゲームTV」(TBS)の中島啓介さん、「ジョージ・ポットマンの平成史」(テレビ東京)の高橋弘樹さん

 「笑っていいとも!」(フジテレビ)や「さんまのスーパーからくりTV」(TBS)など名物バラエティー番組が終わりを迎える中、各局の実力派プロデューサーがテレビの未来を語り合うイベント「テレビマンオールスター戦」が13日午後1時から、早稲田大学大隈記念講堂で開かれる。イベントを前に、「ダウンタウンDX」(読売テレビ)の勝田恒次さん、「ジョージ・ポットマンの平成史」(テレビ東京)の高橋弘樹さん、「リアル脱出ゲームTV」(TBS)の中島啓介さんの、次世代のテレビを担う3人のプロデューサーに「テレビの未来」を聞いた。第3回は、「テレビの未来」について思いを語った。

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−−テレビの未来がテーマなので、お聞きしますが、みなさんは今後どこへ向かっていこうと思っていますか。

高橋 プロデューサーとして目指すところと、ディレクターとして目指すところは違いますけど、プロデューサーとしては、ゴールデンでみなさんが見てもらえるような番組を作ることです。優等生的ですけど。ただ、僕はあまりプロデューサーの仕事がそんなに好きでないので。カメラ持って、新しいところに出かけていって、新しい面白いことが生まれてきたらそれを追っかけて、知らないことを発見して、きれいに撮るというのが好きなので。それを10年、20年続けられるように続ける場所を自分で確保していきたいなと思います。

−−高橋さんの番組って、教養番組風バラエティーの「ジョージ・ポットマンの平成史」とか、タクシーに同乗する「家、ついて行ってイイですか?」とか、渋いアイデアのものが多いですね。

高橋 根が暗めなので、「わっはっはっはっ」とか飲み会に来るギャルが見るような番組でないかもしれない。家で悶々としている人が見る番組を作るのが好きかもしれない。じわじわ、みたいな。

−−ドラマ「文豪の食彩」も渋めですが、テレビ東京でいうと「孤独のグルメ」食べ物系ドラマが当たってますが、意識していますか。

高橋 理論武装としては使えますね。番組やりたいなと思ったときに、「孤独のグルメ」がヒットしているから、間口を広くする意味で、食べ物を足してとか、理論武装として使ったりする。「孤独のグルメ」はあれは(主演の)松重(豊)さんショーですからね。松重さんの面白さで、実はコメディーなのかも(笑い)。

−−面白い企画をひねり出すところを目指すということですか。

高橋 日々思ってます。日常暮らしていて、「面白いな」と思った瞬間とか、「こういうことしたいな」という。欲望が芽生えた瞬間は意識して書き留めたりしている。本屋行って本読んだりとか。テレビマンみなさんやってらっしゃると思いますが、しゅくしゅくとやっていますね。

−−中島さんはどういう方向性?

中島 今年、来年ぐらいは今みたいな手法を使って、変化していく時代の中、今後テレビがお金を稼いでいく手法を見つけて、なるべくその回数を増やして実現させていく。今まで言われてきたテレビとネットの融合とか、これからテレビがどうなるかとか、だれもそれに対して形として、実績を残したり、売り上げを上げるという作業をしている人は、あまりいないなと思っているので、それを自分が得意分野としてやらせてもらっている。本当は視聴率も取れて、お金も取れてというのがベストですけど、今はお金は取れているけど視聴率が取れていない。だから今度は、視聴率をちゃんと目指したいという気持ちはある。新しいところからお金を取るという作業をしながら、一個仕組みを作っていく。ウェブとテレビの関係って正直、再来年とかその先どうなってるか分からないですが、現状をさぐりながら模索しなくてはいけないと思います。

 演出的な側面では、そういうことをやりながら、テレビが好きで、テレビ番組を作って、人を楽しませたいし、びっくりさせたいという気持ちで入っているので、若い世代が見てくれてびっくりするようなことがやりたい。自分の番組は、なんとなくネットを使った番組多いので、新しい表現でできるようになったりとか新しいコミュニケーションそこで取れるようになったので、テレビってこんなことできるんだっていうのを演出としてはしていきたいし、それができて、数字も取れて、スポンサーも喜んで、お金も売り上げも立っていくといいかな。それが一番目指しているところですけど、それに挑戦している。仕組みは作ることは、今年もこの先もいくつか成立しているものあるので。そのあとは演出のことをしっかりやって、数字を取っていく。なんとなくやってみた時期、お金を稼げるようになった時期、お金を稼げて数字を取れるようにならないといけない時期に今年、来年はなるかな。

勝田 局の垣根を超えたオールスター映像戦とかやりたいですね。同じ企画でTBSさんはここ、テレ東さんはここみたいな。ばーっとやってこれ面白い。この人何の番組を作っているの?じゃそれ見に行こうというような。今はテレビからネットなんですけど、ネットからテレビというか。ドラマではやりますよね。脚本一緒で一話はこの監督。それのバラエティー版。テレビ界が全体が盛り上がるに越したことない。サッカーだけでないぞと。熱意をもうちょっとバラエティーにもほしいなっていう。

−−テレビの未来、10年後のテレビってどう変わっていると思いますか。あるいは、そういう時代にテレビを目指す人に必要なものって何ですか。

勝田 DXやっていると、プライベートを芸能人に聞いていくと身近になるけど、スター感は薄れてきたというのもあって。昔の銀幕スターじゃないですけど、もう一度テレビでしか会えない人がスターみたいな人が出てくればいいなとも思ったりする。そうなるとテレビの見方って変わるのかな。神秘性というか。テレビでしか見れない人がいるとすると、もうちょっとテレビの世界に若者が帰ってくるのかと思います。

−−10年後、テレビを目指す人に必要なもの?

勝田 常に一緒にワクワクしようよということなんですけどね。常にテレビを見て、ワクワクドキドキしてやってきたのを、それを継続してやろうよ、というのは10年後も変わるというよりその子供心を変えない人が来るべきだと思うし、それさえあればテレビはまだまだ王道でいけると思ったりする。

−−テレビに対して夢を持って入ってくるというのが基本ですか?

勝田 こんだけ楽しませてもらったから恩返し。自分がやりたいこと、視聴者をイメージしながらでもいいですし、面白いし、やろうという心さえなくさなければ、テレビは強いと思う。そういうキラキラした人がくればいいですね。子供のような人がね。

−−一番若い中島さんはどうですか

中島 そのキラキラ感とか、テレビ大好きというのは絶対大事、絶対必要と思います。テレビの人たちって、テレビ番組作って、世の中に影響のあるものを作って、みんなが見てくれて、面白いと思ってくれて、自分がそれを作ったんだと思う気持ちって、モチベーションになっている人がきっと多いし、それがないといけないと思う。ただ、一方で、自分がなんとか考えてるように、そのキラキラを守り続けられようなことを、少し考えることができる人も必要です。そこを考えていたって、演出のこととか、番組を面白くすることを考える時間がなくなることはないはず。より今までより努力して、勉強して、業界全体を守っていくことを考えて、そのために何しないといけないかを考える。その流れの中で、ネットとテレビのことを考えるのは割と重要になってくると思う。そこを考えられるのは、正直、若い人しかいないと思う。たぶん年齢差とか育ちというか。っていうものが、越えられないところがある。テレビを守りたい、作り続けたい気持ちが大前提であって、テレビが大好きで、そこを守っていくということも仕事の一部と考えてくれる若い人が来てくれたらいいなと思います。

−−10年後、テレビってどうなっていると思いますか

中島 テレビ自体は変わらないと思う。ネットの中に動画コンテンツいっぱいできたりしていますけど。スマホ見て、パソコン見て動画って僕でも10分以内が限度。3分半とかが限界じゃないかな。ショートコンテンツはたくさん出てくるかもしれないが。60分、30分、2時間とかそういう尺のものを作る力は、テレビを作ってきた人にしかないし、それはテレビで見ないと。ネット出てきて10年以上たちましたけど、まだ見られる限界は3分半。10年後に一気にみんなスマホで1時間以上のものを見ているとは、今のところは思えない。そうすると、作られたバラエティーとか、作られたドラマとかのテレビにしかないと思うし。そのクオリティーを求めてテレビに集まってくる。いくらネット視聴が増えているからと言って、そう多く変わっていないと信じています。

高橋 正直分からないですけど、テレビはなくなっているかもしれないと思っている。ほんとに波が必要なのかな。出口がインターネットになったら、別に編成という概念がなくなるだろうし、いつでも見られるから。そしたら今みたいにゴールデンの番組をゴールデンで見る必要がない。もうそうなってますけどね。録画して見ているので。もっと崩れていくと思う。深夜番組、ゴールデン番組という感覚なくなるだろうし。その中で必要なことと言ったら、制作局の立場から言えば、映像を作るのが好きな人。会社のほかの部署としてほしいのは、それをビジネスに結びつけられる人は必要。3Dになるかもしれないし、映像的な進化はあるかもしれないし、それこそテレビ局がなくなっちゃっても、やってることは変わらないので、根本は、ものを書いたり表現したりするのが好きな人がしゅくしゅくとやるというのは変わらない気がします。出歩くのが好きな人、好奇心を持って日々過ごしている人、やりたいからこうしてくれというのはおかしいんですけどね。好きだからやってくれって感じなんですけど。

−−プラスアルファーでいるもの?

高橋 しいていえば、変化が早いので、中島さんみたいに未来を予測する力のある人がいたほうがいい。作り手の相棒は。演出家とプロデューサーが一体化していることが多かった。組む相手として、今までと違うものがほしい。テレビがなくなると想定した場合、いいなと。自分がよく分からないことを言う学生は楽しいなと思います。知ってる世界のことを言われてもまあまああれですけど、分からないことを言ってくれる学生はいいなと思いますけどね。18歳の言ってることわけ分からないんですけど、それをおじさん向けに説明してくれる人が魅力的ですね。

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