ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
紡木たくさんの少女マンガを基に実写映画化した「ホットロード」(三木孝浩監)が16日に公開された。「ホットロード」は、1980年代に月刊マンガ誌「別冊マーガレット」(集英社)で連載され人気を呼んだ作品。母から愛されていないと感じ、誰からも必要とされていないのではと不安を抱える14歳の少女・宮市和希役を能年玲奈さんが演じ、和希が引かれる不良少年・春山洋志役としてボーカル&ダンスグループ「三代目 J Soul Brothers(JSB)」の登坂広臣さんが映画初出演を果たした。今作で俳優デビューした登坂さんに演技についてや恋愛観、能年さんとのエピソードなどを聞いた。
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俳優挑戦の手応えを聞くと、登坂さんは「手応えのようなものはあまりないかもしれない」と意外な言葉が返ってきた。「(事務所の)先輩方に自分にはない人格やキャラクターを演じるのがお芝居の楽しさの一つと聞いていた」と前置きしつつ、「今回は“お芝居”になり過ぎないように気を付けていたこともあった」からだという。「紡木先生はじめ映画関係者の方が僕を選んでくださったのも、素の僕と春山に重なる部分を見付けていただいたからなのではと思います」と感謝し、「演じるのではなく“春山として生きること”を求められていたと思うので、全力で全うしました」と振り返る。
「普段は見ている側なのですべてが初めてでした」と映画の撮影現場に新鮮さを感じたという登坂さん。多くの初体験の中で「ほんの数秒のシーンのために多くのスタッフの方々と、膨大(ぼうだい)な時間を費やして魂を込めて撮っている」ことに何より驚き、撮影の裏側を目の当たりにしたことで「今までは何気なく見ていた映画やドラマの見方が変わった」と語る。さらに「自分も出演する側をやらせていただきましたが、どのシーンを撮るにも一つも気を抜けない」と感じ、「ほんの数秒にものすごい集中力や情熱を注いでいることに驚きました」と打ち明ける。
グループのメンバーには出演オファーがあった時から相談していたと明かした登坂さんは、「僕だけでなくみんなもびっくりしていましたけど(笑い)、やったほうがいいんじゃない、という感じでした」と前向きな反応だった。「僕個人としてもそうですし、グループの一員が映画に出演することはグループにとってもプラスに働くのではという思いもありました」と今後の音楽活動への影響も考えたという。
さらに事務所の社長のHIROさんからは「やりたいと思うならやればいい」と判断を一任されたそうだが、「うちは基本的に強制されるわけではなく自分で判断すべきという感じだから」と説明。演技経験がなく不安を隠せない登坂さんに、HIROさんは「『登坂だったらできると思う』という言葉を掛けてくださり、自分よりHIROさんの方が僕のことを信じてくれていると感じたことが印象的でした」と照れくさそうに笑う。「EXILE」のボーカルのATUSHIさんからも「お芝居に挑戦することは歌にも返ってくることが大きいと思うからチャレンジするのはいいと思う」との言葉をもらい、「すごく力になった」と登坂さん。「不安も多かったんですが、振り返れば背中を押してくれている人たちがいると思うと心強かった」と力を込める。
ヒロインを演じた能年さんの印象は「世間の皆さんと同じだと思いますが、ホワンとした柔らかい空気感の方」というイメージを持っていたが、実際に顔を合わせてから「ストイックで努力家な方という印象」と一変したことを告白。「役を突き詰めて入り込んでいく力が強く、すごく刺激を受けました」と語り、「カメラが回りスタートの声がかかった時の能年さんの迫力と存在感で、自分もたくさんのものを引き出していただいた」と感謝する。
現場では空気感を重んじ、和希と春山の関係性のように互いに多くは話さなかったそうだが、「ふざけるシーンや(和希に春山が)ひっぱたかれたり頭突きされたりするシーンなどは決まったせりふがなく、その場の2人に任せられるような場面では話し合いました」という。「能年さんが『本気でやっちゃっても大丈夫ですか?』と言われたので、僕も『本気で来ていただいた方がいい』と」相談した結果、「本番では思いっきり頭突きをしてくれたので、すごく気持ちがいいくらいでした」と笑いながらその“痛み”を振り返る。
そんな和希と春山のシーンで最も心に残るシーンを聞くと、「春山が『死にたくない』と口にするシーンに特に思い入れがある」と答え、「死をあまり恐がらず、どこか狂気じみた部分を持つ春山が、和希と出会ったことで、『大切な和希を守りたい。もっと一緒にいたい』と思ったからこそ出た言葉」と春山の心情を読み解く。「死にかけてから気付くのは遅いとも思いますが、春山はそういうやつ。そのシーンは原作を読んでいても演じていても、すごく感情的になりました」と感慨深げな表情を浮かべる。
今作では孤独を抱えた者同士の恋愛を描いているが、登坂さんは春山役を通じて「純愛、それも究極の愛」を感じ、「お互いに不器用で相手に伝えられなくてけんかしたり、思いとは逆のことをしたりもする。でも一緒にいることで大事なものに気付いていく2人の関係にはすごく憧れます」と目を輝かせる。2人の恋愛を見て、「僕も『この人しかいない』と思えるような一生に一度の恋をしてみたい」とうらましがるが、「春山と比べたら僕の孤独は家に帰って一人がちょっと寂しい程度。大したことではないですね」と笑う。そして、「和希が家出してきた時などに割と突き放すようなことも言うが、心配だけど相手のことを考えて、自分でなんとかした方がいいという春山なりの優しさだと思う」といい、「彼女が困っていたら自分のことのように悩み、一緒に抜け出す道を考えて一緒に歩もうとするかな。男らしいやり方の春山と僕が違うところ」と自身の恋愛観を語る。
原作ファンの多い作品の実写化ということで、「いろいろな声(賛否両論)があるのは覚悟の上」と登坂さん。「原作をリアルタイムで読まれていた方はもちろん、現代の和希や春山と同世代の皆さんにも2人が生きている世界を見ていただきたい」と完成作に自信をのぞかせる。さらにアーティストとして応援しているファンに向けて、「今まで僕が表現したことのない形なので戸惑う方もいらっしゃると思う」と切り出し、「飾らず変にカッコつけず、ダサくてもいいから一生懸命やろうと覚悟を決めて挑戦しました」と心境を語り、「(グループとして)キメキメでやっている僕ではない“素”の僕を見てほしい。ずっと応援してくださっている方々が映画を見た感想を聞いてみたいです」とメッセージを送った。映画は16日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。
<プロフィル>
1987年3月12日生まれ、東京都出身。オーディション「EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 2~夢を持った若者達へ~」で三代目 J Soul Brothersのボーカルに決まり、シングル「Best Friend's Girl」でデビュー。2012年には7枚目のシングル収録曲「花火」で日本レコード大賞優秀作品賞を受賞する。ライブ活動をはじめCMや「テラスハウス」(フジテレビ系)など多方面で活躍。今作で映画初出演を果たす。6月25日にシングル「R.Y.U.S.E.I.」と映像作品「三代目 J Soul Brothers LIVE TOUR 2014『BLUE IMPACT』」をリリース。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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