ナチ占領下のフランスで、早過ぎる死を遂げて伝説となっている少年ギィ・モケの悲劇を基に描かれた「シャトーブリアンからの手紙」(フォルカー・シュレンドルフ監督)が25日から公開される。ドイツ将校の暗殺に対する報復として銃殺される運命のフランス人と執行する側のドイツ軍人らの葛藤を、緊張感たっぷりに見せている。「ブリキの太鼓」(1979年)の名匠シュレンドルフ監督の下にフランスとドイツのキャストとスタッフが集結した。
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1941年10月19日。ドイツ占領下のフランスのシャトーブリアン郡にあるショワゼル収容所には、占領に反対する者や政治犯などが収容されていた。17歳のギィ・モケ(レオポール・サルマンさん)は、映画館で占領批判のビラをまいて収容された。収容所では、デモを行った大学生のクロード・ラレ(マルタン・ロワズィヨンさん)と仲良しだ。ギィは、塀の向こうの女子収容所にいるオデット(ビクトール・デュポワさん)に恋をしていた。翌日、ドイツの将校が暗殺され、ヒトラーは収容所にいるフランス人150人の銃殺を命じる。パリのドイツ軍司令本部では、無謀なこの命令を回避しようとしたが、執行の先延ばしができただけだった。フランス人の副知事が、銃殺される人質のリスト作りを命じられ、ドイツ軍の司令官は政治犯の多いショワゼル収容所からも人質を選ぶことを選択する。そのリストには、まだ17歳のギィや釈放されるはずだったラレの名前もあった……という展開。
1941年10月19~22日の4日間が流れるように描かれている。報復の銃殺を阻止しようとするドイツ軍人や難題を突き付けられるフランス人の葛藤、人質となった者たち、一人一人の心象が、センチメンタルに傾くことなく、現実感を伴って浮き彫りになる。処刑を前に遺書を書く人質たち。フランスの名優ジャンピエール・ダルッサンさんが演じる神父が、複雑な表情で手紙を預かっていく。そこから処刑場までの時間が、鉛のようにズシリと重い。思考の欠如と全体主義の恐ろしさの前に、死にゆく者たちがどこまでも気高い。架空の人物としてドイツ軍の少年兵を登場させ、彼の視点から見つめた風景が突き刺さるように心に残る。ノーベル文学賞作家ハインリヒ・ベルさんの小説と、作家で思想家のエルンスト・ユンガーさんの回想録から着想を得たシュレンドルフ監督が脚本を書いた。次回作も第2次世界大戦下の物語になるという。シアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区)ほかで25日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作観賞後、ホロコースト関連本を読みあさっているところ。現在は「ユダヤ人を救った動物園 ヤンとアントニーナの物語」を読書中。
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