俳優の染谷将太さんと女優の前田敦子さんが共演した映画「さよなら歌舞伎町」が24日から全国で公開される。東京・新宿の歌舞伎町にあるラブホテルを舞台に、そこで繰り広げられるワケありの男女5組の1日を描いた群像劇だ。「ヴァイブレータ」(2003年)、「やわらかい生活」(05年)でタッグを組んだ廣木隆一監督と脚本家の荒井晴彦さんコンビの3本目の作品となり、つじあやのさんが映画音楽を初めて手掛けている。
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一流ホテルマンと周囲に偽り歌舞伎町のラブホテルの店長をしている徹(染谷さん)と、その恋人でプロのミュージシャンを目指す沙耶(前田さん)、人目を忍んで生活している男女(松重豊さん、南果歩さん)、金を稼ぐために日本にやって来た韓国人カップル(イ・ウンウさん、「5tion」のロイさん)、風俗スカウトマン(忍成修吾さん)と家出少女(我妻三輪子さん)……いわくつきの男女が、やがて徹のホテルに集まり、それぞれに抱える秘密や思いが明らかになっていく……というストーリー。
前田さんが徹役の染谷さんに向かって「ねえ、しよ」という言葉に、「えっ、あのあっちゃんが!?」とドキっとさせられ、松重さんと南さんの夫婦らしき2人が1枚の小さいアジを分け合う姿に笑い、韓国人カップルの互いを思う気持ちに切なくなった。ほかにも、河井青葉さんや宮崎吐夢さん、村上淳さんや大森南朋さんらがワケありの男女に扮(ふん)し、ちっぽけな人間のささやかな物語がつづられていく。ここに登場する人々はみな、それぞれに事情を抱え、もがきながら生きている。本人はいたって大真面目に悩んでいるが、はたから見ればその姿は滑稽(こっけい)にすら映る。でも、人間の生活とは、案外そういうものかもしれない。そういったギャップを、廣木監督はいつものように人々の感情を丁寧にすくいとりながら、軽やかに見せていく。喜劇であり悲劇であり、心温まる物語でもある。見終えた時、もがいているのは自分だけではないと心がふっと軽くなると同時に、無性に人の温もりが恋しくなった。24日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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