注目映画紹介:「ゲキ×シネ『阿修羅城の瞳2003』」染五郎、天海の舞台映像をデジタルリマスター化

「ゲキ×シネ『阿修羅城の瞳2003』」のワンシーン (C)2015 ゲキ×シネ「阿修羅城の瞳2003」/松竹、ヴィレッヂ
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「ゲキ×シネ『阿修羅城の瞳2003』」のワンシーン (C)2015 ゲキ×シネ「阿修羅城の瞳2003」/松竹、ヴィレッヂ

 「劇団☆新感線」の人気舞台を映画館で上映する「ゲキ×シネ」シリーズの「阿修羅城の瞳2003」(作・中島かずき、演出・いのうえひでのり)が11日に公開される。今作は、歌舞伎俳優の市川染五郎さん、女優の天海祐希さん、俳優の伊原剛志さんらを迎えて2003年に上演された舞台を映像化し、デジタルリマスターしたもの。映画館で初めてテスト上映されたゲキ×シネの原点ともいえる作品だ。江戸を舞台に、鬼から人々を守る魔事師だった男がたどる運命を描いている。客演の3人が見せる圧倒的な存在感と芝居の迫力に圧倒される。

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 文化文政の江戸の街は平和そうに見えるが、裏では人と鬼が激戦を繰り広げていた。かつて特務機関「鬼御門」で“鬼殺し”と恐れられた魔事師・病葉出門(市川さん)は、5年前の事件をきっかけに引退。鶴屋南北一座に弟子入りしていた出門だが、謎の女つばき(天海さん)と出会ったことで運命が狂い始め……というストーリー。

 今から12年も前に上演されていた作品だが、今見ても色あせず、感動と興奮を味わえる。歌舞伎のような様式美がありながらも、今風のエンターテインメント性も盛り込まれ、魅力的な世界観を構築している。その中で共演するキャストの芝居には、心をつかまれる。少しカッコよすぎる感もあるが、とにかく痛快なまでのヒーローを演じきった染五郎さん、鬼気迫る迫力で邪空を演じた伊原さんはじめ、俳優たちの演技には熱がこもっている。中でもつばき役の天海さんの演技は出色で、歌や踊りにクライマックスでのパワフルな立ち回りだけでなく、愛憎や悲哀といった心情も見事に表現している。舞台は生で見るものだと先入観を持っている人も、生に匹敵する臨場感と感動を映画館で味わってほしい。細部に行き渡った演出の数々に驚かされるに違いない。丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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