今年の第87回米アカデミー賞で作品賞はじめ4部門に輝いた映画「バードマン(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督)が10日から公開される。「バベル」(2006年)、「アモーレス・ペロス」(00年)などの作品で知られるイニャリトゥ監督が、これまでのシリアス路線から作風を変え、初めてコメディーに挑戦した。
ウナギノボリ
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スーパーヒーロー映画「バードマン」シリーズ終了から20年。主役を演じ一躍スターになったリーガン(マイケル・キートンさん)だったが、その後、ヒット作に恵まれず、私生活でも結婚に失敗。薬物に溺れる娘サム(エマ・ストーンさん)との関係もうまくいっていない。リーガンは復活を懸けて、自らの脚色、演出、主演でブロードウエーに立とうとする。しかし、共演者の一人が大けがを負って降板。実力派の舞台俳優マイク(エドワード・ノートンさん)が代役としてやって来るのだが……という展開。
ファンタジー要素も含まれたコメディーで、イニャリトゥ監督らしくない映画だ。それでも、人間に対する深い洞察は欠かさず、それどころか主人公は自分の存在意義を確認するために内面深く潜っていき、自分の超自我であるバードマンが語り掛けてきたりする。主演のキートンさんに始まり、ストーンさん、ノートンさんといったキャスティングにもひねりが利いており、ハリウッドのアメコミ原作信奉に対する揶揄(やゆ)や、話題になるのも早いが飽きるのも早い、現代社会の風潮に対するアイロニーも感じられる。観客の知的好奇心をくすぐる作品であることは間違いなく、全編1カットで撮影したかと見まごうばかりのエマニュエル・ルベツキさんのカメラワークも見事だ。とはいったものの、これまでのイニャリトゥ作品との違いに戸惑ったことは、正直に告白しておこう。ほかにザック・ガリフィナーキスさん、ナオミ・ワッツさんらが出演。10日からTOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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