「未来世紀ブラジル」(1985年)や「12モンキーズ」(95年)などで知られるテリー・ギリアム監督の最新作「ゼロの未来」が16日に公開される。コンピューターに支配された近未来の世界を舞台に、謎めいた数式「ゼロ」の解明に挑む孤独な天才プログラマーが、ある女性との出会いをきっかけに人生が動き出していく様子を描いている。2度のアカデミー賞に輝いたオーストリア出身の俳優クリストフ・ヴァルツさん、「海の上のピアニスト」(98年)などの仏女優のメラニー・ティエリーさんら実力派が顔をそろえ、人間の存在意義や真実の愛といった普遍的な事柄について深く考えさせられる。
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コンピューターで世界を支配する大企業・マンコム社に勤務する天才プログラマーのコーエン(ヴァルツさん)は、「ゼロ」という謎の数式解読に挑みつつ、人生の意味を教えてくれる電話が鳴るのを待っていた。ある日、上司のジョビー(デビッド・シューリスさん)が開催したパーティーでベインズリー(ティエリーさん)と出会う。強引なベインズリーに最初は戸惑うコーエンだったが、次第に引かれるようになる。さらに数日後、壊れたコンピューターの修理をしにマネージメントの息子(ルーカス・ヘッジズさん)が現れ驚くべき秘密をコーエンに明かす……というストーリー。
コンピューターに管理された近未来が舞台で、主人公は生きる意味を見失いそうになっている。これは舞台と設定こそ変化しているが、根底に流れるテーマは「未来世紀ブラジル」に通じるものがある。突き抜けた世界観やストーリーもそうだが、近未来でありながらレトロ感を漂わせている彩度が高い色遣いの都市が印象的だ。主人公のコーエンに代表される道化的な登場人物はじめ、主人公が暮らす荒廃した教会などあらゆるものがカオスに満ち、洗練されていながらもどこかアナログさも感じさせる。コーエンを演じるヴァルツさんの演技は、笑いと愛らしさがあふれ、まさにはまり役。ブラックユーモアやウイットに富んだ脚本や演出などが、複雑な現代における人生の意味を巧みに描き出している。新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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