AI(人工知能)を搭載したロボットの運命を描いたSF映画「チャッピー」(ニール・ブロムカンプ監督)が23日から公開される。「第9地区」(09年)の鬼才ブロムカンプ監督が再びヨハネスブルクを舞台に描いたオリジナル作で、育ての親となったギャングの元で成長したロボットが、開発者を巻き込んで闘いを繰り広げながら壮絶な運命をたどる。
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2016年。南アフリカのヨハネスブルクでは、ロボット警察を投入して以来、犯罪件数が減っていた。ロボットを開発したのは、兵器企業テトラバールに勤める若き開発者ディオン(デーブ・パテルさん)。ディオンはAIを搭載したロボット作りを上司のミシェル(シガニー・ウィーバーさん)に申し出るが却下され、無断でスクラップ寸前のロボットに搭載しようと画策。しかしロボットの運搬中にギャングに誘拐されてしまう。ロボットに強奪の手伝いをさせたいギャングに、脅されながらAIを搭載すると、ロボットが起動。赤ちゃんのように怖がるロボットに、女性ギャングのヨーランディ(ヨーランディ・ビッサーさん)はチャッピー(シャールト・コプリーさん)と名付ける。その頃、ディオンの活躍をねたんだ同僚のビンセント(ヒュー・ジャックマンさん)がディオンを陥れようと機会を狙っていた……という展開。
チャッピーは、純真無垢(むく)な状態で生まれ、高速で成長していくロボット。まるで遺伝と環境の影響を受けながら育つ人間の子どものようだ。悪のアジトでチンピラ風情になっていくのを、開発者のディオンが命懸けで阻止しようとするが、途中チャッピーに反抗期らしきものが訪れるのもなかなかほほ笑ましい。生みの親と育ての親があまりにも対照的で、チャッピーの自我は引き裂かれないのかと心配してしまうが、唯一無二の存在の「ママ」がいたので大丈夫。女性ギャングのヨーランディは、「姿かたちではなく中身が大事」と、チャッピーにまっすぐな愛を向ける。こうしてロボットを子として疑似家族の物語が進んでいくが、サイドでは、同僚のねたみが展開され、次第に主軸になり、ロボット同士の迫力あるバトルが繰り広げられる。もうじき切れるチャッピーのバッテリー問題、そして、ディオンやギャングたちの運命は……とハラハラさせられる展開が加速。チャッピーをモーションキャプチャーで演じたのは、「第9地区」のコプリーさん。心とは何かという命題が横たわる作品にふさわしい動きを見せ、見る者の心を捉える。ブロムカンプ監督の次作は「エイリアン」の新作だという。丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほかで23日から公開。(文・キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。足長、小顔のチャッピーのデザインがカッコいい。ディオンの家で掃除していたロボットが欲しくなりました。
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