超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は16~18日(米国時間)、米サンフランシスコで開催された世界最大のゲーム展示会「E3(エレクトロニック・エンタテインメント・エキスポ)」を通して、ゲーム業界のトレンドを探ります。
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E3はもともと、年末商戦に発売されるソフトの商談会としてスタートしたが、近年では出展内容が多岐に広がり、今年はVR(バーチャルリアリティー)向けの展示が激しい競争を繰り広げた。
会場で大きな注目を集めたのが、VRデバイスの二強とされるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プロジェクト・モーフィアス」と、オキュラスVR社の「オキュラス・リフト」だ。SCEは新作を含めた18本、オ社は9本のデモを展示。さらに、VRの体験希望時間を予約できる専用アプリを配布するほどの盛り上がりだった。他にも新興企業からさまざまなVRデバイスが出展されるなどにぎわいを見せていた。
私はプロジェクト・モーフィアスではホラー体験ができるカプコンの「キッチン」、オキュラス・リフトでは宇宙戦闘ゲーム「イブ・バルキリー」などを体験。「キッチン」はいすに縛り付けられたまま猟奇殺人者にナイフで殺害されるという生々しい体験をした。「イブ・バルキリー」ではレーダーまで鮮明に表示されたコクピットの中で、頭を動かしながら索敵するなどの激しい宇宙戦闘が楽しめた。
オキュラス・リフトを中心に、VRデバイスと組み合わせて使う器機の展示も見られた。専用台の上に立って実際に歩いて移動したり、射撃ゲームをするのに空間上で位置が検出できる銃器型デバイスを使用する……などだ。VRデバイスは視界をゴーグルで覆うため、手元を見ずに直感的に利用できる新しい入力方法も求められていたが、指輪型デバイスも登場するなどユニークな提案が見られた。
VRデバイスの盛り上がりにインディーズ(独立系)ゲーム開発者も敏感に反応している。会場のインディーズゲームのコーナーでは、従来型のゲームに交じって、さまざまなVRゲームが出展された。ロサンゼルス在住のインディーズゲーム開発者によると、市内でVRゲームの小規模な展示イベントが毎月のように開かれ、ベンチャーキャピタリストからの投資も広がっているという。
一方で米マイクロソフトがE3に合わせて実施した記者向け説明会でアピールした「マイクロソフト・ホロレンズ」のように、新しい流れも出てきた。現実世界に立体映像を重ね合わせて投影し、AR(拡張現実感)が体験できるメガネ型コンピューターで、同社が7月29日に発売する新しい基本ソフト「ウィンドウズ10」で動作する。ここから新しいゲームやコンテンツが登場する日も近そうだ。
ゲームは技術主導型のエンタテインメントで、今後も技術の進化に伴い、まったく新しいデバイスやコンテンツの登場が期待される。スマホゲームやデジタル流通の拡大とともに、E3の持つパッケージゲームの商談会という機能は踊り場に差し掛かっているが、最新のゲームや体験が世界中に紹介される……という展示会としての機能は、引き続き重視されそうだ。
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